聖母マリアの服は決まっている? 絵画の“約束事”とは【美術鑑賞のツボ/後編】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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聖母マリアの服は決まっている? 絵画の“約束事”とは【美術鑑賞のツボ/後編】

美術館賞を楽しむための5つのツボ②

「たまには教養のために美術館へ」と常設展に出向いたはいいが、いざ鑑賞となるとどうも名画の良さがわからない。そんな美術鑑賞ビギナーのために、専門家がカンタンで楽しい鑑賞術を伝授する(後編)。

◆サイズ感をリアルに体感し、現地とのリンクを楽しむ

 絵画鑑賞をより楽しむには現地で作品を見ることも重要なポイント。「現地で見ると作品のサイズ感がわかり、また当時どのような場所で鑑賞されていたかも体感できます」と話すのは、絵画をわかりやすく紹介する書籍を執筆する佐藤晃子さん。
 例えば奈良県にある高松塚古墳壁画は、人が数人入ればいっぱいになりそうな狭い石室の壁面に描かれた彩色壁画。現地で模写を見るだけでも、当時の職人たちの苦労が伝わってくる。「同様に教会の壁に描かれた絵画やステンドグラス、寺の襖絵なども現地で見ることで作者の思いがリアルに感じられたり、その制作意図に気づくなど楽しい発見があります」と佐藤さん。その一例がイタリアの画家、カラヴァッジョの『聖マタイの召命』だ。

写真を拡大 『聖マタイの召命』 ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ 1600年/油彩・カンヴァス/ サン・ルイジ・ディ・フランチェージ聖堂蔵

 この絵は主人公の聖マタイがどこにいるのかよくわからないという不思議な絵で、左から3人目の髭の男がマタイとされてきた。しかし、左端でうつむく若者がマタイだという説が浮上。
「この宗教画は、コの字型の礼拝堂の向かって左側の壁に飾られていますが、やや斜めの位置からこの絵を見ると、うつむく若者が目立って見え、彼がマタイだとわかるといわれます」。
 まさに現地に行かなければ体感できないおもしろさだ。

 
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佐藤 晃子

愛知県出身。明治学院大学文学部芸術学科卒業、学習院大学大学院人文科学研究科博士課程前期課程修了。西洋や日本の美術をわかりやすく紹介する著書の執筆を手がけるライターとして活躍。美術に関する講演も多数。


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