◆統一試験の限界

「ムーミン問題」は、大学入試問題の新しい形を提案し、統一入試の可能性を示したのかもしれない。「ただし」、と石川氏は言う。

「ただし、『ムーミン問題』のような問題が、統一入試の限界でもあると思うんです。まず、センター試験や新テストのような統一入試では、どうしても『科目』という枠組みにとらわれてしまう。今回の場合は地理Bからの出題でしたから、地理Bで教えられた知識を使った問題、というふうに限定されてしまうんです。たとえば、地理Bで習った知識と国語で身につけた技能が融合したような『ムーミン問題』があってもいいはずなのに、それができないというのは、統一試験であることの弊害かなと思います。
 そして何より、ムーミンの問題は確かに思考力を問えているかもしれませんが、解答者に何かを生み出させることまではできていません。創造的な思考力や表現力は問えていないんです。仮に、新テストで記述式が導入されたとしても、受験者が50万人近い大規模な統一試験では、ある程度解答の方向性が決められてしまいますし、国語の記述問題が80字から120字程度で答えさせることになりそうだということからも、受験者の創造性が発揮されるような出題はできないでしょう」。

 要するに、「ムーミン問題」は創造の前段階で止まってしまっている中途半端な問いだということになる。だとすれば、創造的思考力や表現力は、どのように問われ得るものなのか。
「統一試験では難しいと思います。受験生の創造性をはかる問題は、AO入試や推薦入試、大学の個別試験などで出されるべきもので、統一試験については、現行のセンター試験のように知識・技能が習得できているかを問う形でいいのではないかと私は思います。だから今回の『ムーミン問題』に関して、過度に批判するべきではないと思うと同時に、過度に素晴らしい問題だと褒める必要もないと思っています」。