宮城県石巻市で目撃される幻の「駐車」標識 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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宮城県石巻市で目撃される幻の「駐車」標識

【毎月20日更新】世にも奇妙な道路標識 第9回:幻の標識の最高峰「駐車三兄弟」を追う

「斜め駐車」もあの街に

 では「斜め駐車」標識はどこかにあるのだろうか。これも長らく発見報告がなかったのだが、筆者の知る限り初の報告は2014年になされた。その場所はなんと東京のど真ん中ともいうべき、東京駅の八重洲バスターミナルというのだから、標識界(?)が震撼したのも無理からぬところであった。

 筆者も一度訪れねばと思いつつ機会を逸し、ようやく現地に足を運んだのは2016年夏のことであった。が、現場にたどり着いた筆者の目に飛び込んできたのは、無情にもただの「駐車可」の標識であった。しばしその場で呆然と立ち尽くしたのはいうまでもない。

写真を拡大 八重洲の「斜め駐車」標識は、ただの「P」に変わっていた

 情報によれば、「斜め駐車」標識があったのは、バスターミナルの改装工事の間だけであったらしい。推測するに、奥のバス停(写真でバスがいるところ)はバスが道路に対して斜めに止まる設計のため、この位置に「斜め駐車」の標識が立てられた。が、工事が進んでこの標識の近くに道路と平行のバス停(白い枠線)が作られたため、紛らわしいと判断されて「駐車可」と入れ替えられた、ということではないだろうか。まあしかしこういうこともあるから、標識の道は油断がならないのである。

 ということで、「斜め駐車」はひとときの幻と消えたかと思っていたのだが、最近になってまた設置例が報告された。場所は、これも石巻市の石巻魚市場前で、やはり津波被害を受けて最近再建された施設だ。宮城県はよほどこの標識を気に入っているのだろうか。

 で、最後の「直角駐車」標識だが、どうもこれだけいまだ発見報告がなく、完全な「幻の標識」であるようだ。この標識がどうしても必要なシチュエーションというのはあまり思いつかないから、まあ当然かとも思える。設置の期待を持てるとすれば、やはり宮城県をおいて他にないだろう。そのときには観光を兼ねてじっくり見て回りたいので、宮城県警関係者にはぜひご検討いただきたいと思う次第である。

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佐藤 健太郎

さとう けんたろう

1970年兵庫県生まれ。東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了。大手医薬品メーカーの研究職を経て、サイエンスライターとして独立。文系の読者にもわかりやすい解説で定評があり、東京大学大学院理学系研究科の広報担当特任助教として東大の研究実績を対外発信する業務も担当した。『医薬品クライシス』(新潮新書)で2010年科学ジャーナリスト賞、2011年化学コミュニケーション賞を受賞。著書はほかに、『「ゼロリスク社会」の罠』『化学で「透明人間」になれますか?』(ともに光文社新書)、『炭素文明論』(新潮新書)、『ふしぎな国道』『世界史を変えた薬』(ともに講談社現代新書)などがある。


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