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誤解されるがんの「標準治療」 正しい意味とは

がん治療のニュースでよく聞く「標準治療」……本当に理解していますか?

■「標準」という言葉に対する誤解

 がんの標準治療は、日本では基本的に健康保険が適用されます。

 この、保険が利くという事実や、「標準」という言葉が、「あまり効果が期待できないのではないか」とか「お金さえ出せばもっといい治療法があるはずだ」という誤解を生んでいる面があります。標準を「上・中・下」の「中」と捉えてしまうのです。

 歯科の治療で、前歯を差し歯にしたことがある人ならわかると思いますが、保険が適用される差し歯だと、どうしても色味などに不自然さが出ます。一方、保険外のものならば、高額ではあるけれどきれいな仕上がりになります。それと同じことが、がん治療においてもあるのではないかと考えてしまうようです。

 しかし、差し歯の違いはあくまで「見た目」の問題であり、歯としての嚙 む機能は変わりません。だから、安い差し歯にしか保険は利かないわけです。

 がんの標準治療に保険が適用されるのは、厚生労働省が「効果がある」と認めているからです。今や厚労省は一人あたり一年に三〇〇〇万円する新規抗がん剤すら保険適用とするのです(これも問題をはらんでいますが)。

 だから、「標準治療では物足りない」という考えは捨ててください。こういった考えはむしろ高学歴の方や高所得者の方に多いようです。芸能人もその類(たぐ)いかもしれません。そういった方の治療法などが雑誌の釣り広告を賑わせていますが、医師から見ると、残念で仕方ありません。
『最新科学が進化させた世界一やさしいがん治療』より構成>

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武田 篤也

たけだ あつや

放射線治療専門医。1994年、慶應義塾大学医学部卒業。慶應義塾大学病院、防衛医科大学校病院、都立広尾病院にて放射線治療診療を行う。2005年に大船中央病院に赴任し、放射線治療センターを開設。以降13年あまりの間に、全国有数の高精度放射線治療施設とする。SBRT(体幹部定位放射線治療)を2000例以上行う(肝臓がんは世界1位、肺がんは国内2位)。70編以上の医学英文論文に加えて専門書『The SBRT book』(篠原出版新社刊)を執筆。中東の某石油産出国の国王に呼ばれ、診療を行った経験もある。


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  • 武田 篤也
  • 2018.01.19