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児童福祉と少年司法の狭間で苦しむ子ども達

「セックスワークサミット2017秋 」第3部レポート 第2回

●最近の子どもはキレやすいモンスター?

 彼や彼女は、どのような思いで非行をするのでしょうか?

「最近の子どもはキレやすい」「反省がない」「モンスターだ」と言われることがあります。私はこれまで100件以上少年事件に関わっていますが、手のつけようのないモンスターだ、自己責任でどうしようもない、と思えた子どもは少なくとも私が関わった範囲では一人もいません。

 非行の背景として何らかの虐待や複雑な家庭環境が影響しているケースが非常に多いです。非行少年に比較的共通する傾向としては、強がっているのだけれども、本当は自分に自信がない。自分を大切にできない。先の見通しもなく、リスクをとることにも抵抗が無い。今の自分を大切にできないのだから、将来のことを考える余裕はない。他人を基本的に信頼できない。威嚇したり警戒したりする。そして信頼関係を築けそうな人には、過度に依存する。他者との関係形成が苦手で、安心安全な居場所が身近にはなくて、そうしたことが非行に影響しているということが少なくありません。

 少年司法の現状として事件数自体は年々減少しています。よく少年事件は凶悪化していると言われることもありますが、警察庁の統計を見れば明らかな通り、凶悪な事件は昔からあり、統計上はむしろ減少している。どちらかと言えば、最近の少年事件は幼稚化していると言われています。犯行動機も短絡的なものが多い。

 女子少年に関しては、男子少年に比べると、非行の割合は少ないです。どちらかと言えば、女子の場合は精神疾患や児童買春に結びついていく場合が多い。

 一昔前の少年は、いわゆるヤンキー気質でどこか筋が通っていて、ガツンと言うと「なにくそ」という形で歯向かってきて、そのバネを活かして更生していくという方法が取れました。

 しかし最近の子は、ガツンと言うとそこで潰れてドロップアウトしてどこかに行ってしまう。今までの方法が通用しなくなったという戸惑いを子どもの更生保護に関わる人たちからよく聞きます。

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「セックスワーク・サミット2017冬 「つながる風俗女子」+シンポジウム「みんなでつくる『適正風俗』」(主催:一般社団法人ホワイトハンズ)が、2017年12月3日(日)に、東京都渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターにて開催されます。

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坂爪 真吾

さかつめ しんご

1981年新潟市生まれ。一般社団法人ホワイトハンズ代表理事。東京大学文学部卒。



新しい「性の公共」をつくる、という理念の下、重度身体障害者に対する射精介助サービス、風俗店の待機部屋での無料生活・法律相談事業「風テラス」など、社会的な切り口で、現代の性問題の解決に取り組んでいる。2014年社会貢献者表彰、2015年新潟人間力大賞グランプリ受賞。著書に『セックスと障害者』(イースト新書)、『性風俗のいびつな現場』(ちくま新書)、『はじめての不倫学』(光文社新書)などがある。


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