【阪神・淡路大震災に学ぶ】減災、被害最小化…防災のプロが教える災害への備えとは? |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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【阪神・淡路大震災に学ぶ】減災、被害最小化…防災のプロが教える災害への備えとは?

我が家の防災力を強化する

防災

地震に代表される防ぎようのない自然災害。これらがいつ訪れるのかは誰にもわからない。そして、いざ災害が発生した時、事態に冷静かつ適切に対応することは極めて難しい。だからこそ、平時からの備えが重要となるのだが、具体的かつ効果的な「防災」とは何なのだろうか。防災士であり「まるごと防災」という企業の枠を超えた取り組みを主導する、帝人フロンティア株式会社 新事業開発室主管の岸本 隆久さんに話を聞いた。


■正しく恐れて対策する〝自助〟でできることは多い

 以前は産業資材部門でインテリア関連の仕事をしていた岸本さんは、阪神淡路大震災や東日本大震災をもたらした大きな地震とその後の想定外の二次災害の惨状を目の当たりにした。それが契機となり、防災について真剣に考え始めるようになったという。
 防災士としての顔も持つ岸本さんは、防災関連展示会などを利用してセミナーを開催したり、自治体・マンション等の管理組合が主催する防災訓練で講義を行うなど、積極的に活動している。そこで気がついたのは、災害に対する正しい知識と、一人ひとりが自分の身は自分で守るという「自助」の精神の大切さだったという。

 そこで、平常時から発炎時、そして被災後までを包括的にサポートするため、そして正しい防災知識を啓発するため、帝人フロンティアをはじめとした18社が参加し、防災力を高めるための総合的なプランを提案する『まるごと防災』を立ち上げた。被害を最小限に食い止めるために、平時の備えから被災後までをパッケージ化した商品を開発し、まとめて提示していこう――これが『まるごと防災』という取り組みである。

 一般的に災害といえば地震を連想する方が多いだろう。岸本さんによれば、一般家庭の場合、地震が起きた際に注意すべきは家具の転倒だという。タンスや
本棚などは多くの家庭にある大型家具だが、これらが転倒すれば大怪我につながりかねない。しかし、家具転倒防止対策の普及率は全国でわずか3%程度というのが実情だ。
 転倒した家具によって直接的な怪我を負わなかったとしても、それらが部屋の出入り口や玄関といった逃げ道を塞いでしまうと、外に逃げることも、救助を受け入れることも難しくなる。普段からの対策によって、災害後の被害までをも軽減できる可能性があることを知ってほしいと岸本さんは話す。

「賃貸住宅の場合、家具転倒防止の固定具の設置は現状回復義務に支障をきたすため難しいという方も多い。そうした課題を解決する商品が必要でした。特にご高齢者の一人暮らしや、お子さんがいる家庭にはぜひ設置してもらいたいです」(岸本さん ※以下同)

 まるごと防災が提案する商品には振動吸収型の固定具がある。強粘着シートでしっかりと固定できるのかという疑念もあるだろうが、心配はないとのこと。また、こちらの商品にはキャスターストッパー付きの関連商品があり、すでにオフィスなどではコピー機の暴走防止やロッカーの転倒防止に重宝されているという。岸本さんは、これも家庭に取り入れ、ピアノなどに取り付ければ、安全性は格段に増すと説明してくれた。他にもテレビ台や大型ワゴンなど、キャスター付き家具は現代の家庭には多いはずだ。

 

■お洒落なインテリアよりも命を守るカーテンを

 続いて、火災に対する防災についても話を聞いた。

「建物が火事に見舞われたとき、屋内で危ないのは〝炎の通り道〟と呼ばれるカーテンです。いったん火が付くとあっという間に天井まで燃え広がり、その結果、人の命まで奪われてしまうのです」

 消防法はホテルや学校、病院などの不特定多数が集まる公共施設と、高さ31m以上の高層マンションに対して防炎カーテンの設置を義務づけている。しかし、法律で義務づけられているのは前述のような特定の建物だけであり、戸建てや低層マンションは規制の対象外だ。人が1日のうち、最も長い時間を過ごす自宅の大半では、居住者自身で対策を行う必要があるのだ。
 そこで、防炎カーテンより耐火性の強いカーテンを開発し、さまざまな建物へ導入できないかと考えた結果、250℃に達すると消火作用のある不燃性ガスを発し、自動的に消化を行うカーテン『プルシェルター』を開発した。これは500℃の熱にも耐えうる素材でできているため、火災の初期段階でカーテンを利用した消火も可能となる。

「カーテンはインテリアとしての側面があるため、その性能よりもデザインを重視される方が多い。防災力のある機能を持ちながら、インテリアとしての価値も高めていくことで、多くのご家庭に設置してもらいたいと考えています」

 また、カーテンを取り付けるフックにも防災力を高める商品があるという。

「消防署によっては、カーテンに火が付いた場合は、天井への延焼防止のた

め『破るように』と指導しています。しかし、カーテンは厚手のものが多く、簡単には破れません」

 『プルック』というフックを使えば、引っ張るだけで簡単にカーテンを取り外すことができる。先のプルシェルターと合わせることで、消火や延焼防止だけではなく、避難時に被れば、火の粉から身を守ることもできるようになる。

 

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