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連続出場が途切れた箱根駅伝名門校。その主将を任された1年生の涙

箱根駅伝ノート・中央大学 第2回

キャプテンと自分のスタイルのギャップ

「自分は自己完結型なんです。不安も人には吐かないですし、問題があっても自分ひとりで解決するようにしています。自分でもかなり我が強いと思いますね(笑)。それは自分の弱点でもあって、自分の芯が折れたときに支えてもらいたくないって言う気持ちが邪魔してしまうこともあるんです」

 常に強気の舟津だからこそ、5月の関東インカレ5000mで24位に沈んだときも、誰かに頼ることができず、苦しんだという。その後、自分の〝競技観〟を見つめ直した。

「勝ちたい、というエゴを前面に押し出すのが自分の走りで、かなりトラック向きの考え方だと思うんですけど、いつの間にか『キャプテンとしてチームのために結果を残さなければいけない』という気持ちが強くなっていました。これまで大切にしてきた『自分のために走る』ということが疎かになっていたんです……」 

 舟津は自分のスタイルを取り戻すと、6月の全日本大学駅伝予選会3組でトップを飾り、9月の日本インカレ1500mで優勝。貪欲な走りで、チームを盛り立ててきた。

 藤原監督も「調整していないなかで、日本インカレの1500mを勝ち、予選会20㎞もしっかり走ってくれました。能力と努力がようやく握手しだしたのかなと思います。4~5月は良くありませんでしたが、苦しんで走れないときの気持ちをわかって、そこから声かけの質が変わりました。人間的にも成長したと思います」と2年生主将を評価する。

 自分にも他人にも厳しい舟津だが、箱根予選会の通過を決めたときには、「自分たちがやってきたことは間違いではなかった。3位で通過できたことは自信になりますね」と胸を張った。さらに「チームとして初めて目標を達成できましたが、先輩方がいなければ成り立たたなかった。特に4年生の力
は大きいと思います」と先輩たちへの感謝も忘れなかった。

 それでも〝ストライカー〟としての本能はなくしていない。「ラスト勝負は負ける気がしないので、箱根駅伝は1区で区間賞を狙っていきたい。チームとしては総合8位以内を目指します!」と名門・中央大のリスタートを劇的に決めるつもりでいる。〈第3回に続く〉

(『箱根駅伝ノート』より構成)

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酒井 政人

さかい まさと

1977年生まれ、愛知県出身。「箱根」を目指して東京農業大学に進学。1年時に出雲駅伝5区、箱根駅伝10区に出場。2年時の故障で競技の夢をあきらめて、大学卒業後からスポーツライターに。陸上競技をメインに取材して、様々なメディアに執筆している。著書に『箱根駅伝 襷をつなぐドラマ』(角川新書)、『箱根駅伝監督 人とチームを育てる、勝利のマネジメント術』(カンゼン)、『東京五輪マラソンで日本がメダルをとるために必要なこと』(ポプラ新書)。


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