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【教育×デジタル】1人1台の端末支給によって、教育現場はどこに向かうのか

第59回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

オンライン授業

 

■まもなく実現する1人1台端末

 2021年は教育、そして学校にとって大きな意味をもつ年になりそうだ。
 世界中を直撃した新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)の影響は多方面におよんだが、教育も例外ではなかった。大きく変わろうとしているのは、なんといっても学校でのICT利用環境である。
 政府が2020年4月7日に閣議決定した緊急経済対策において、2023年度までの達成を文科省が予定していた「1人1台端末」の実現が前倒しされ、2021年3月までに実現されることになった。そのICT環境整備のための予算額は、2292億円におよぶ。

 OECD(経済協力開発機構)加盟国の生徒を対象に行われるPISA(学習到達度調査)の18年実施調査結果によれば、日本のICT活用は加盟国内で最下位だった。その原因の判断は難しいところだが、端末の普及が大きな障害になっていたことは間違いない。
 2019年8月30日に文科省が発表した同年3月1日時点の「教育用コンピュータ1台あたりの児童生徒数」は、全国平均で「5.4人」となっている。しかも、これはあくまで全国平均であり、そのバラつきは大きい。例えば佐賀県では1.8人だが、愛知県は1台あたり7.5人といった具合である。

 

■教育×ICT分野における日本の現状

 このような状況では、ICTを授業に活用することは難しい。
 OECDのTALIS(国際教育指導環境調査)の2018年報告書には、「中学校で生徒に課題や学級での活動にICTを活用させる」という調査結果が載っている。
 それによれば、トップのデンマークでは活用の割合が9割に達しているが、日本は2割にも満たない。OECD加盟国のなかで後ろから2番目である。ICT端末普及率が最下位なのだから、これは当然の結果なのかもしれない。
 しかし、2021年3月までには「1人1台端末」が実現する。普及率であればOECDの中でトップになるだろう。そして、手元に端末があれば何らかの形で利用されることになる。ICT活用でもOECD加盟国トップの座に躍りでるに違いない。

 ただし、言うまでもないが、端末が普及したからといって、実質的にICTを活用した授業がすぐに実現できるわけではない。活用するには、それを利用した授業そのものから考えていく必要がある。 

 

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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