その後、ふたりは家人の目を盗んで情事を続けたが、同じ屋敷内である。いつまでも気づかれないはずはない。夫も姑もふたりに疑惑の目を向けるようになった。
 ついに、ふたりは心中を決意した。

 夫が江戸城で泊まり番の日の深夜、女は死に装束の白衣を着て、左門を迎えた。
 寝室でうめき声がするので家人が駆けつけると、女は白装束を真っ赤に染めてすでに息絶えていた。左門は首を刀で突いたものの死にきれず、苦悶のうめき声を発してのたうちまわっていた。

 心中未遂となれば厳罰をうけるため、春日家では表沙汰にせず、ひそかに女の遺骸を実家の赤井家に送り届けた。赤井家では病死として葬った。左門は手当てを受け、一命は取り留めた。
 傷が快癒したあと、左門は兄の半五郎とともに職務に励んでいるという。

 後味のよい結末とは言えない。なんとなく釈然としないと言おうか。男女の悲劇というより、けっきょく女の悲劇ではあるまいか。