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間違って思い人の兄と結婚してしまった女の悲劇

江戸の性 第147回

 その後、ふたりは家人の目を盗んで情事を続けたが、同じ屋敷内である。いつまでも気づかれないはずはない。夫も姑もふたりに疑惑の目を向けるようになった。
 ついに、ふたりは心中を決意した。

 夫が江戸城で泊まり番の日の深夜、女は死に装束の白衣を着て、左門を迎えた。
 寝室でうめき声がするので家人が駆けつけると、女は白装束を真っ赤に染めてすでに息絶えていた。左門は首を刀で突いたものの死にきれず、苦悶のうめき声を発してのたうちまわっていた。

 心中未遂となれば厳罰をうけるため、春日家では表沙汰にせず、ひそかに女の遺骸を実家の赤井家に送り届けた。赤井家では病死として葬った。左門は手当てを受け、一命は取り留めた。
 傷が快癒したあと、左門は兄の半五郎とともに職務に励んでいるという。

 後味のよい結末とは言えない。なんとなく釈然としないと言おうか。男女の悲劇というより、けっきょく女の悲劇ではあるまいか。

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永井 義男

ながい よしお

小説家、江戸文化評論家。1997年『算学奇人伝』で開高健賞受賞。時代小説のほか、江戸文化に関する評論も数多い。著書に『江戸の糞尿学』(作品社)、図説吉原事典(朝日新聞出版)、江戸の性語辞典(朝日新聞出版)など。


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