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老いは「しばり」から解放されるチャンス

頭の中で「金」をのさばらせない 60歳からの「しばられない」生き方①

お金に「しばられない」生き方

「しばられない」といえば、やはり「お金」か。

「世間体」とか「常識」といえば「とらわれない」という言葉が妥当だろう。「他人の評価」は「気にしない」。「小さいこと」といえば「くよくよしない」とか「こだわらない」。

 お金はそれらに比べて、支配度が強いのだろう。「しばられる」がピッタリである。なにしろ、しばられたら身動きがとれない。

 金に苦労した経験なら、学生時代を含めて何度か経験した。子ども時代も家はつねに逼迫した。いまとなってはいい経験だったといえるが、金がないとほんとうに心が縮こまるのだ。  

 あの頼りなさは情けなくて、絶望的で、生きている心地がしない。それでも赤貧洗うがごとし、というほどではなかったにせよ、毎日は憂鬱であった。

 そんなときに、お金にしばられるな、といってもなんの役にも立たない。そんなことをいっても、一円もお金が増えるわけではないからだ。

 金がないのは、金が増えることによってでしか解決されない。もう、ああいう貧乏はごめんである。ただし、このような状態はお金にしばられているというのとはちがう気がする。単純にお金がないだけのことである。

 頭のなかが、お金のことで半分以上占められてもしかたがない。働くか生活を切り詰めるしかない。しかし、頭のなかが半分以上「金が一番という価値観」で占められている場合は、金でしばられているのである。

 金にしばられている人間とは、世の中で一番大切なのはお金という価値観をもっている人である。とにかくお金が欲しい、お金を持っている人間が一番エラい、お金がなければ幸福になれない、人生の目的は大金持ちになること、といった価値観にとらわれている人間である(しかし年収が2000万円以上になると、満足度はそれほど上がらない、といわれる)。

 大金持ちを羨んでも、自分のお金は1円も増えない。それどころか、勝手にストレスを溜めるだけである。最低限、食べることができ、住むところがあれば、金のしばりからは解放されると思うのだが。

 あと5万円あればもっと生活に余裕ができるのにと思っている人は、5万円増えればあと5万円というに決まっている。キリがない。ほんとうにあと5万円必要なら働くしかない。

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勢古 浩爾

せこ こうじ

1947 年、大分県生まれ。明治大学政治経済学部卒業。洋書輸入会社に入社、 34年間勤続し、2006年に退職。以後、執筆活動に専念。 著書に『いやな世の中』(ベスト新書)』、『まれに見るバカ』(洋泉社・新書y)、『自分をつくるための読書術』(筑摩書房)、『定年後のリアル』(草思社文庫)シリーズ、『ウソつきの国』(ミシマ社)など多数。


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