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「赤ちゃん縁組」で悲劇は減るのか

「セックスワークサミット2017秋 」第2部レポート 前編

「相談者の自己決定をサポートする」ことに徹する

 産みの親へのカウンセリングで大事にしていることは、特別養子縁組は最後の手段であって安易には勧めないということです。あくまで相談者の自己決定をサポートする、という立場が大切です。これは社会福祉の基礎的な考え方なので、どの分野の支援でも言われることですが、こと妊娠・出産、そして生まれた子どもを誰かに託すという決断においては、本人が納得して決めるということが特に大切だと思っています。

 産んでから気持ちが変わって、自分で育てたいと思うこともあります。それも充分にありえることです。だからこそ私たちは、意思確認と養親さんとのマッチングは、産んだ後に、最終的な意思確認を行ってから、という形にしています。カウンセリング中でも、「もし自分で育てたいと思ったら、いつでも言ってくださいね」ということを折に触れて伝えています。最終的に「託す」と本人が決断したケースのみ、養子縁組の支援を行っています。

 逆に出産後にもし気持ちが変わった場合に、そのことを言い出しづらくなるような支援は問題だと考えています。今養子縁組のあっせん事業者は、国内に20弱あり、中には、産んでくれたら200万円あげますよ、といったメッセージで妊婦に呼びかけている団体もあります。

 私たちは、そういった発信には疑問を感じています。確かに相談者はほとんど全員がお金に困っていて、みんなお金の支援をしてほしいと考えています。フローレンスでもどうしても必要な場合は生活費の支援することもあります。しかし金銭の約束があることで、「やっぱり育てたい」と言い出しづらくなる可能性も孕むことを支援者は自覚していなくてはなりません。子どもを人に託すかどうかを、本人が悩みながらしっかり考えて決めていく。そのためにどんなサポートが一番いいのかをいつも考えています。

 たとえ自分で育てるかどうかに関わらず、悩み抜いて決めたことは、生みのお母さん本人にとってその後の人生の大きな自信になるはずです。

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「セックスワーク・サミット2017冬 「つながる風俗女子」+シンポジウム「みんなでつくる『適正風俗』」(主催:一般社団法人ホワイトハンズ)(http://www.whitehands.jp/20171203.html)が、2017年12月3日(日)に、東京都渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターにて開催されます。

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坂爪 真吾

さかつめ しんご

1981年新潟市生まれ。一般社団法人ホワイトハンズ代表理事。東京大学文学部卒。



新しい「性の公共」をつくる、という理念の下、重度身体障害者に対する射精介助サービス、風俗店の待機部屋での無料生活・法律相談事業「風テラス」など、社会的な切り口で、現代の性問題の解決に取り組んでいる。2014年社会貢献者表彰、2015年新潟人間力大賞グランプリ受賞。著書に『セックスと障害者』(イースト新書)、『性風俗のいびつな現場』(ちくま新書)、『はじめての不倫学』(光文社新書)などがある。


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