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「赤ちゃん縁組」で悲劇は減るのか

「セックスワークサミット2017秋 」第2部レポート 前編

特別養子縁組とは

 その一方で、社会背景として不妊の問題があります。現在、夫婦の5.5組に1組が不妊に悩んでいます。今厚生労働省もこの問題に着眼して、不妊治療に対する医療補助が受けられるようになっていますが、この8年間で利用者が6倍に増加しています。日本はまさに不妊治療大国です。

 子どもを望む夫婦の中にはたとえ血がつながっていなかったとしても子どもを育てたいと願う人が一定数います。そういった夫婦と生みの親が育てられない事情を抱えている子どもとのマッチングを行って、なんとか子どもを救っていきたい。

 それが特別養子縁組です。特別養子縁組は、親に養育されるのが難しい子どもが、生みの親との関係を法的に断ち切って、新たに育ての親との実親子同様の関係を結ぶことで家庭を得られるという制度です。民法817条で定められている公的な制度で、現状では6歳未満が対象になっています。生みの親は完全に親権がなくなる=法的な親子関係がなくなるという点が、普通養子縁組とは異なります。

 現在、年間で500件ほど成立していますが、これは諸外国と比較しても非常に少ない数字で、例えばアメリカでは年間12万件です。日本では親が育てられない子どものほとんどは施設の中で育っていきます。諸外国ではこの逆で、親が育てられない子どもの大半が養子縁組や里親で育ちます。成長過程における乳幼児期の愛着形成が極めて重要であることから福祉の観点からも子どもは家庭で育つのが好ましいというのは世界共通の認識ですが養子縁組の取り組みが遅れているのが日本の現状です。

 具体的な活動としては、産んでも育てられないという妊婦さんからの相談に対応する活動を行っています。その一方で、育ての親になりたい方の公募・審査・研修を行っていて、育ての親の育成活動も行っています。そして支援している産みの親の方が出産後、両者をマッチングして、子どもに家庭を得てもらうという取り組みです。

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「セックスワーク・サミット2017冬 「つながる風俗女子」+シンポジウム「みんなでつくる『適正風俗』」(主催:一般社団法人ホワイトハンズ)(http://www.whitehands.jp/20171203.html)が、2017年12月3日(日)に、東京都渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターにて開催されます。

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坂爪 真吾

さかつめ しんご

1981年新潟市生まれ。一般社団法人ホワイトハンズ代表理事。東京大学文学部卒。



新しい「性の公共」をつくる、という理念の下、重度身体障害者に対する射精介助サービス、風俗店の待機部屋での無料生活・法律相談事業「風テラス」など、社会的な切り口で、現代の性問題の解決に取り組んでいる。2014年社会貢献者表彰、2015年新潟人間力大賞グランプリ受賞。著書に『セックスと障害者』(イースト新書)、『性風俗のいびつな現場』(ちくま新書)、『はじめての不倫学』(光文社新書)などがある。


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