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第44回 野岩鉄道で日帰り温泉旅行

 ちょっとポカポカ温泉に浸かりたくなり、浅草から東武線に乗って北上した。鬼怒川温泉は前に行ったことがあったので、さらに先へ向かう各駅停車に乗り換えた。
 

湯西川温泉駅に到着

 新藤原駅で東武線は終点となる。乗った電車は、その先、野岩鉄道に直通するので、そのままでいると、自動的に野岩鉄道の会津鬼怒川線を走りだした。浅草から新藤原までの東武線には、短いトンネルが1ヶ所だけだったのに、野岩鉄道はトンネルだらけだ。
 

 

トンネル内の駅の様子

 龍王峡駅の次は川治温泉駅、さらに川治湯元駅、湯西川温泉駅、中三依温泉駅、上三依塩原温泉口駅と温泉にかかわる駅名が連続し壮観である。トンネルを抜けると鉄橋で谷間を渡り、またトンネルに入る。そして出ると、谷を横切って駅に到着。こんな風に繰り返して電車は進んで行く。この中で、トンネルの中にある湯西川温泉駅で降りてみた。
 

 

ようこそ湯西川温泉へ

 

 トンネルの中とはいっても、すぐ先で地上に出るので、明るくなっている。トンネル内の狭い空間にホームが1本だけあり、出口がイルミネーションで飾られている。階段を上っていくと、しばらくして地上にある駅舎に到達した。面白い構造だ。
 

 

五十里湖を渡る野岩鉄道

 

 駅のすぐ隣に「道の駅」があり、その中に立ち寄り湯があった。温泉に入る前に、周囲を散策してみる。道路が走っていて、横断するとダム建設で出来た五十里(いかり)湖が目の前にある。脇に鉄橋があり、先ほど乗ってきた野岩鉄道のものだ。しばらくすると、会津方面から野岩鉄道の電車が鉄橋を渡ってやってきた。渡りきるとトンネルに入って湯西川温泉駅に停車するのだ。
 

 

道の駅と一体となった湯西川温泉駅

 

 当分、次の電車はやってこないので、「道の駅」に入り、売店を冷やかした後、2階にある温泉に入った。午後の温泉は、人もまばらでのびのびと過ごすことができた。時折、電車の走る音が聞こえてくるけれど、窓ガラスが曇っていて、外の様子は分からなかった。
 

 

日帰り温泉入口

 

 帰りは、湯西川温泉駅で浅草までの切符を購入した。女性の駅員さんは、親切にも電話で鬼怒川温泉駅からの特急の指定券を取ってくれた。オンラインではないところが、今どき珍しいけれど、発券は手書きではなく、パソコンに入力後、印刷したものだった。

 上りの電車はガラガラで、四人掛けボックス席を独り占め。太陽が山影に隠れていくのを見ていると、東武線の鬼怒川温泉駅に到着した。同じホームの反対側に特急スペーシアが停まっていて、乗りこんで席に着くと同時に発車した。たまには、こんな日帰り温泉旅行もいいものである。

野田 隆

のだ たかし

1952年名古屋生まれ。日本旅行作家協会理事。早稲田大学大学院修了。 蒸気機関車D51を見て育った生まれつきの鉄道ファン。国内はもとよりヨーロッパの鉄道の旅に関する著書多数。近著に『ニッポンの「ざんねん」な鉄道』『シニア鉄道旅のすすめ』など。 ホームページ http://homepage3.nifty.com/nodatch/

 

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