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フランス革命政府はMMTを実践していた!【佐藤健志】

佐藤健志の「令和の真相」29

◆貨幣は「数値化された信用」だ

 貨幣(マネー)とは何か?

 ずばり言ってしまえば「数値化された信用」です。

 

 信用(クレジット)とは、「何らかの財やサービスを提供した見返りを受け取る権利」と定義される。

 平たく言えば、「貸し」をつくった状態。

 

 「貸し」があるところ、反対側には必ず「借り」がある。

 何らかの財やサービスを提供してもらった見返りを提供する義務です。

 こちらは負債と呼ばれます。

 

 仕事をして、1万円の支払いを受けるということは、仕事をした相手にたいする「貸し」を、1万(円)という「数値化された信用」によって清算してもらったことを意味する。

 相手にしてみれば、仕事をしてもらったことにたいする「借り」を、1万(円)という数値化された信用によって清算したわけです。

 

 貨幣を受け取った側は、今度は自分が1万までの「借り」をつくっても大丈夫。

 くだんの貨幣を相手に渡して、清算すればいいのです。

 そして貨幣を渡された相手は、今度は自分が1万までの・・・

 以下繰り返し。

 

 つまり貨幣は、「一定量の借り」の存在を示すもの。

 どれくらいの量の借りがあるかは、貨幣の数値によって表されます。

 貨幣の本質は、信用という特別な意味を持った数字にほかなりません。

 

 数字なのですから、貨幣による決済が、紙幣や硬貨といった現金通貨(キャッシュ)のやり取りを伴う必要はない。

 現金のやり取りがなくとも、当事者の信用を表すと認定された数字(=銀行口座の残高)が変動すれば良いのです。

 これがご存じ、キャッシュレス決済。

 「キャッシュレス」であって、「マネーレス」でないことに注意して下さい。

 現金と貨幣は違うのです。

 

 現金の移動を伴わないまま、貨幣による決済を可能にするプラスチックのカードを、われわれは何と呼ぶか?

 クレジット・カードです。

 他方、ATMから現金を引き出すために使われるカードの名称はキャッシュ・カード。

 キャッシュ(現金)とは、数値化されたクレジット(信用)であるマネー(貨幣)が、たまたま物理的な形を取ったものと定義できるでしょう。

 

 このあたりについて、さらに詳しく知りたい方は、中野剛志さんの著書『目からウロコが落ちる奇跡の経済教室 基礎知識編』(KKベストセラーズ)や、私の『平和主義は貧困への道 または対米従属の爽快な末路』(同)をご覧下さい。

 

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佐藤 健志

さとう けんじ

佐藤健志(さとう・けんじ)
 1966年、東京生まれ。評論家・作家。東京大学教養学部卒業。
 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。
 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。
 主著に『平和主義は貧困への道』(KKベストセラーズ)、『右の売国、左の亡国 2020s ファイナルカット』(経営科学出版)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)など。共著に『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』( VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』( PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年12月、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。
 2019年いらい、経営科学出版よりオンライン講座を配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻に続き、現在は『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻が制作されている。

 

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