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神宮大会でも阻まれた全国の壁。聖光学院、主将の悔恨

田口元義が迫る聖光学院

■「隙があった」コーチの厳しい叱咤激励

 

 創成館は強かった。

 11安打6得点の打線は「相当振り込んできたんでしょうね」と斎藤監督に言わしめ、3回1死一、三塁からスクイズで1点、なおも一、三塁から、ショートゴロで併殺を許さず得点する走塁と、機動力の質も高かった。投手起用も積極的で、相手に捕まる前の早めの継投。3投手をつぎ込まれ、聖光学院は付け入る隙を与えてもらえなかった。

「打撃や走塁でうちがやりたいことをやられてしまったし、継投も早かった。(6回から登板した)3番手の伊藤(大和)君は、前の試合でもストレートとスライダーがよかったから、リードされた場面で出したくなかったんですけどね」

 斎藤監督が認めるように、この試合の創成館は全てにおいて聖光学院を上回っていた。矢吹に全責任があったわけではないのだ。
 それでも矢吹は、自責の念に駆られていた。試合後の囲み取材、目を真っ赤に充血させながら、自分を戒めるように言葉を絞り出す。

「監督、部長、コーチ。それに、3年生の先輩たちに恩返しをしたくて。秋はその集大成として、明治神宮大会は本気で日本一を目指してやってきたので……。自分が絡んで負けた試合。甘さと弱さが出ました」

 矢吹が自覚しているように、創成館戦では、甘さと弱さが浮き彫りになったことは否定できないのかもしれない。主力選手を中心に形成されるAチームの石田安広コーチは、矢吹に対し、あえて厳しい言葉で突き放す。

「矢吹は、まだ感覚で野球をしているところがあるんです。だから隙が出た。県大会、東北大会とそれなりに結果を残してきましたが、そういう時だからこそ、誰よりもバットを振ったり、もっと自分に厳しい姿勢で野球に取り組めていたら、あの試合だって、最後、また違う結果になっていたかもしれない」

 石田コーチが言う矢吹の隙。指導者の立場からすれば、咎めるべき欠点であり、是正を求めるのは当然である。

 ただ、取材する立場としては、こうも思いたくなる。矢吹は主将として、チームをけん引することに全精力を注いできたのではないか、と。

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田口 元義

たぐち げんき

1977年福島県生まれ。元高校球児(3年間補欠)。ライフスタイル誌の編集を経て2003年にフリーとなる。Numberほか雑誌を中心に活動。試合やインタビューを通じてアスリートの魂(ソウル)を感じられる瞬間がたまらない。現在は福島県・聖光学院野球部に注目、取材を続ける。


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