銚子行き特急「しおさい」の旅 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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銚子行き特急「しおさい」の旅

途中から単線、普通列車の待ち合わせもある…のんびりムードの特急旅

 

 佐倉駅から銚子駅まで65.2㎞を「しおさい3号」は65分かけて走る。表定速度は60㎞とがくんと下がる。停車駅も6駅、飯岡~銚子間を除けば一駅おきに停車する。佐倉~八街(やちまた)間は2駅通過になっているけれど、榎戸駅では対向列車とすれちがうため運転停車。相手が特急なら納得だが、何と普通列車を待つとは情けない。列車ダイヤ上、やむを得ないとはいえわびしい話だ。

 八街は駅名標の脇に「日本一の落花生の郷」とあるように、落花生で有名なところだ。ピーちゃん、ナツちゃんというキャラクターのイラストが楽しい。

八街駅に停車。「日本一の落花生の郷」の看板にキャラクターのイラストが

 成東駅では東金線が分岐する。このあたりからは、広々とした平野の中を軽やかに走っていく。各駅の構内の線路の敷き方が昔のままなので分岐するあたりがカーブになっていて、減速を余儀なくされる。高速で突っ走らないところが逆にローカル線らしい風情を醸し出し「乗り鉄」には好ましい。ムードはよいけれど、長距離バスとの競争で苦戦する理由のひとつであろう。

 横芝駅、八日市場駅、旭駅と停まるたびに乗客が三々五々降りていく。車両の前方に座っていたので気が付かなかったけれど、車内を振り返ってみると閑散として相当寂しい状況になっていた。

 飯岡駅を発車すると、列車は築堤を上っていく。飛行機が離陸するときのような車窓風景だ。遠くまで見渡せ思わず見とれてしまう。上り切ったところでトンネルに突入。闇の中を走るのは佐倉駅の手前以来だ。

飯岡駅を発車すると築堤を駆け上がる

 トンネルを抜けると、これまでのある意味単調だった平野の風景とは一転して山岳地帯を走る。といっても険しさはあまり感じない緩やかな丘陵地帯である。それでも、旅の最後に車窓の「山場」を迎えるとは、「しおさい」の旅もなかなかのものだ。丘の向こうには風力発電の風車が複数立っている。人工的なものではあるけれど、山が険しくないので、逆にアクセントになっていて目立つ。

松岸駅の手前で成田線の電車を追い抜く

 山を下りて再び平野に差し掛かると、左手から単線の線路が近づいてくる。佐原方面からやってきた成田線だ。合流して単線のまま並走する。成田線の銚子行き電車が先を走っていたのだが、さすが特急は軽々と追い越してしまう。向こうは松岸駅に停車するので減速していたのだ。線路は松岸駅を過ぎると単線になる。「しおさい」は成田線の普通電車を追い抜いた形でそのまま銚子駅ホームに滑り込んでいった。

銚子駅到着間際の「しおさい」

 ホームに降り立つと、意外に多くの乗客が改札口に向かって歩いていた。指定席車両は閑散としていたが、自由席は、ほどほどに混みあっていたようだ。GO TO トラベルを利用して犬吠埼などに向かう観光客であろうか?平日だったので、中高年の女性グループやシニアの夫婦が目に付いた。

 跨線橋を渡って、隣のホームの先端にある銚子電鉄の乗り場へ。「しおさい」の旅は終わったけれど、銚子電鉄の短いけれど楽しい旅の始まりである。

銚子駅に到着した「しおさい」


ようこそ銚子へ

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野田 隆

のだ たかし

1952年名古屋生まれ。日本旅行作家協会理事。早稲田大学大学院修了。 蒸気機関車D51を見て育った生まれつきの鉄道ファン。国内はもとよりヨーロッパの鉄道の旅に関する著書多数。近著に『ニッポンの「ざんねん」な鉄道』『シニア鉄道旅のすすめ』など。 ホームページ http://homepage3.nifty.com/nodatch/

 

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