ジャーナリストとしてのオンリーワンの強み

岩政 なるほど。書こうと思ったときに意識したことってありますか。

小澤 書き手としての勉強をしていないことが弱みだということは分かっていました。そのなかで、日本人でバレンシアのトップチームの練習を毎日見ている人間は僕しかない、それを日本向けに書こう、ということが絶対的なものでした。オンリーワンの強みだと思ったわけです。だから、とにかくピッチレベルで、リーガの優勝争いをするようなチームはどんな練習、どんなトレーニングをしているのか。それを一週間みた上で、いかに試合に反映された、されなかったかを書こうと思っていました。当時のバレンシアの監督は(クラウディオ)ラニエリでした。選手のやり取りなどが基本的にオープンで、全部見ることができました。

岩政 なるほど。

小澤 僕にとってはとても大きい経験でした。初めて会うメディアの方に「当時ブログを見ていました」と言われることが今でも多いんです。

岩政 そうなんですね。実際にライターとして書くことを始めようとしたのは依頼が来るようになったからですか?

小澤 そうですね。ウェブメディアを中心にスペインのサッカーに関するお話がちょくちょく来るようになりました。携帯サイトもそうですね。ちょうどウェブでサッカーのコンテンツが増えてきた時期でしたから。そういう新興メディアに結構、使ってもらって、逆にそこから雑誌の仕事がきたり、という感じでした。

岩政 ほかのジャーナリストの方はどんなふうに始めるんですか。

小澤 スペインにいた日本人同業者の方は基本的に、新聞社の通信員が多かったですね。フリーランスの方もいますけど、そもそも「単身、スペインに乗り込んで書き手になるぞ」と思って来ているわけではなくて、「スペインに住みたい、スペインサッカーが好き」という理由でスペインに来て、生計を立てていく上で、書く仕事をもらっている方が多いですね。

岩政 へぇー。僕もブログ発信で書き始めたわけですけど、それならそんなに恥ずかしがることはないですね(笑)。

小澤 逆に岩政さんみたいな「本物の方」が来られると僕たちの出番はないです(笑)。

岩政 いやいや、そんなことはないです(笑)。でも、「書くことで食べていこう」となると、同じ書き手の人のことも見るようになりますよね? その中で自分の特色というものはどういうところにあると思いますか。最初はバレンシアに向き合うことがあったと思いますが、そのあとの「書くこと」を考える上で。

小澤 基本的にはニッチに、マニアックに行きたいなと思っていたんですね。なので、最初の段階から生き抜く戦略じゃないですけど、「日本人があまりいなくて現場が見られるところで、そこで起こっていることを書きたい」な、と。具体的にはチームやグループの視点です。僕は指導者になりたかった人間なので、選手個人をスターダムとして扱うよりもチームという生き物がシーズンを通してどう日常を送っているか、どういうことが起きているのかに興味あったわけです。たまに帰国して見る日本メディアでは、まだまだ選手をメインとして取り上げる記事や、選手のルポが多かったのでチームやグループの視点であれば、勝ち目があるんじゃないかと思って特化しようと思った部分はあります。
内田篤人推薦、「今年のサッカー本、ナンバーワン」サッカー界が絶賛する岩政本

次のページ ピッチレベルで伝える