三ツ星店、あの忘れられない味「クー・ド・ブッフ」 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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三ツ星店、あの忘れられない味「クー・ド・ブッフ」

世界のミシュラン三ツ星レストランをほぼほぼ食べ尽くした男の過剰なグルメ紀行⑤

宝石箱の中の巨大なダイヤモンド

 その茶色の宝石箱に、藤山はナイフとフォークを入れた。いや、入れたというのは的確ではない。むしろ、肉の塊に、藤山の手にしたナイフとフォークの先が触れたと言ったほうが近い。

 すると、どうだ。まさに「はらり」という言葉しか表現できないほどの、微妙に、肉が骨から滑り落ちたのである。むしろ、いままでどうやって骨にくっついていたのか、と思うほど、いとも簡単に、肉の破片は、赤ワインソースにしどけなくその身を投じたのである。

 僕はフォークで、肉をソースの赤い海から助け出すかのように掬うと、口の中に一気に放り込んだ。他の肉にない牛肉の持つ独特の甘さと赤ワインのコクがあいまって、コクがあるけど、意外にさっぱりとした風味になっていた。煮込んだ肉にしっかりと赤ワイン風味がしみ込んでいる。

「これはうまい!」

 酒に弱い藤山でも、赤ワインソースは大丈夫だ。それに、オックステールはステーキのように、もっと強く肉の味がするのかと思ったが、むしろ、逆に、スッキリ感が口のなかに広がってくるので、食べやすかった。したがって、皿の中央は、あっという間に、きれいな骨のかたまりが残った。これこそ、宝石箱の中の白く巨大なダイヤモンドに見えた。

 牛尾は、フランスでは決して高級素材ではないが、その牛尾を使ってここまで高貴な料理に仕上げることができるのだと思った。まさに、伝説のシェフ、ベルナール・パコー氏たるゆえんである。

 現在、「ランブロワジー」では、この「牛尾の赤ワイン煮込み」は封印され、食べることはできない。本当に残念だ。しかし、東京・三田の「コート・ドール」では、必ずメニューに載っている。しかも、「コート・ドール」の斉須政雄(1950〜)オーナーシェフは、「ランブロワジー」で、ベルナール・パコー氏と開店当時から一緒に働き、店を二ツ星まで獲得した盟友であるから、まさに僕が堪能した「ランブロワジー」の「牛尾の赤ワイン煮込み」と同じ味。

 藤山は、この「コート・ドール」に行けば「ランブロワジー」のこの料理を、いつでも味わうことができるのが何よりうれしいと思っている。フランス料理に興味があるなら、ぜひ、この料理を「コート・ドール」で食べてみてください。心からおすすめする。アラカルト(単品)で、6000円前後だ。

 また、「牛尾の赤ワイン煮込み」はダメでも、パリの「ランブロワジー」に行ってみたい人は、昼夜メニューが同じで、アラカルトのみだから、土曜日の昼に行くのがおすすめだ。なぜかというと、ホテル内レストラン以外のパリの高級レストランは、ほとんど土曜日昼食は休みで、空いていることが多いからである。

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藤山 純二郎

ふじやま じゅんじろう

会社員

料理評論家

東京出身。幼稚舎、普通部、高校、大学と慶應義塾で学ぶ。



祖父は日本商工会議所会頭や初代日本航空会長も務め、



岸信介内閣の外相で大活躍した藤山愛一郎。



純二郎は普通のサラリーマン。



料理評論家の山本益博の薫陶を受け、



89年から『ミシュランガイド』(ミシュラン社)を片手に現在まで28年間、



世界の三ツ星レストランを食べ歩き、全119店中、114店を制覇(2017年9月現在)。



現在も、会社に長期休暇をとっては、三ツ星の美食を「胃袋に」収める。



執筆は、91年『東京ポケット・グルメ〈1992-93年版〉』(文藝春秋)、



95年から『東京食べる地図』(昭文社)、



『ダイブル−−−−山本益博の東京横浜近郊たべあるき』(昭文社)を



95年版から01年版まで記者として参加。


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  • 藤山純二郎
  • 2017.09.27