【美食バカ一代】新三ツ星レストラン「ラサルテ」への旅。
世界のミシュラン三ツ星レストランをほぼほぼ食べ尽くした男の過剰なグルメ紀行③
サクラダ・ファミリア的価値のある三ツ星レストラン
2017年5月2日、深夜23時40分、VY(ブエリング)7333便はモロッコのメナラ空港を飛び立ち、闇の中を一路、スペイン、バルセロナ空港へ。
午前11時。目が覚めた。早速、シャワーを浴び、新三ツ星を訪ねた。もちろん、日本から予約を入れてあるから心配はない。
新三ツ星レストラン「ラサルテ」は、アントニオ・ガウディ(1852〜1926)が建築した世界遺産「カサ・ミラ」から徒歩3分という絶好の立地。にあるホテル「モニュメント」内のレストランだが、完全に別経営になっていた。入り口もそれぞれ別々に存在する。
この「ラサルテ」、06年1月開業し、07年に一ツ星獲得。それから3年経って10年に二ツ星、そして、17年についに三ツ星になった。バルセロナ市内で初の三ツ星レストランの誕生である。
ちなみに、このお店、実はスペインに9軒ある三ツ星レストランのひとつ、スペインの北部バスク地方のサンセバスチャン近郊の三ツ星レストラン「マルティン・ベラサテギ」のバルセロナ支店なのだ。ということは、本店も支店も三ツ星? そういうことらしい。でも、なぜ、名前がちがうのか。「マルティン・ベラサテギ・バルセロナ」でもすればわかりやすいのに、「ラサルテ」とは何だろう。
新三ツ星の「ラサルテ」の名前は、実は、店のオーナーシェフ、マルティン・ベラサテギ氏の生まれ故郷で、しかも三ツ星レストラン「マルティン・ベラサテギ」のある町の名前だ。
まあ、わかりやすく言えば、「すきやばし次郎本店」の「次郎」が「マルティン・ベラサテギ」なら、「すきやばし」が「ラサルテ」だ。ちなみに、「すきやばし次郎本店」の91歳の小野二郎(1925〜)氏は、本名が「次郎」でない。
さて、この新三ツ星レストラン「ラサルテ」、いったいどんな料理が出てくるのか、楽しみに席に着いた。僕は、テイスティングメニューを選択した。これはコース料理で、11皿+プティフール(ひと口サイズのケーキ)。さっそく、以下、出て来た料理を紹介しよう。

11皿で約2万5000円
まず、前菜。これだけでも1時間かかって出てくる。
(1)ややマリネした温かいオイスターアイスクレソンのスラッシュ、バースニップと海霧。
(2) 緋色のエビロイヤルレッドカレー、生アンティチョーク、セロリ、リンゴ。
(3)野菜の葉と花びらのサラダ、ハーブ、レタスのクリームとロブスターともやし。
フランスの地方の三ツ星「ミシェル・ブラス」の「野菜のガルグイユ」に匹敵する名作だと思う。数えきれないくらいの多数の野菜の下に薄いゼリーを敷いていて、野菜各種自体の野菜本来の滋味を感じさせる旨さとゼリーの相性の良さ。
(4)発酵キノコとコラールグリーンを、エキストラバージンオイルタッチで。
(5)和牛のカルパッチョタラゴン、ヨウ素添加サラダ、冷凍チーズパウダー。
(6)貝とウニのクエンリゾット。
(7)海底の赤いエビ、フェンネルとサンゴエマルジョン。大きな赤座海老がひとつ上に緑ソースを円形に垂らし、下に乳濁液を敷いたものだが、とにかく、この赤座海老の質が素晴らしい! 半生でギリギリのところを狙った火加減であることが良く理解できる。
(8)グリルドーバーソールフィッシュ、フジツボの「マリニエール」ソース、タコのスライス、カボチャとサフラン。
いよいよ、『2017ミシュラン』掲載スペシャリテのメイン料理。
(9)ガランガルと柑橘類、ケーパー、黒オリーブとスモークソースと炭火焼き鳩。鳩の質と焼き加減が凄い。鳩ではなく、最上質の刺身2片を食べているような食感で、その鳩をコクのあるオリーブと赤ワインソースで食べさせ、もう1片には上に刻んだシトラスを載せ、口中をさっぱりさせて味の変化を楽しませる堂々たる三ツ星料理! デザートに入る。
(10)シソとミントのシャーベット、酸性のタッチとミルクカリカリの葉。
(11)アーモンドとソウルプラリネ、アプリコットとラムのアイスクリーム
(12)プティフール
いやあ、満喫した。オリジナルと創造力に富んだ素晴らしい味だった。鳩料理は、本場のパリに決して負けない。いや、僕の個人的意見で言わせてもらえれば、これまでに食べた鳩料理のなかで、間違いなくベスト3に入る料理だった。さすが、「マルティン・ベラサテギ」だ。
シェフが16時10分頃、挨拶にテーブルに来た。名前はパオロ・カサグランデ(1981〜)氏。36歳。スペインの新三ツ星レストランのシェフがイタリア人とは驚いた。ヴェネチア近くの出身とのこと。記念写真を撮り、英語のメニューをいただいて、支払い。2203ユーロ(約2万5000円)。これだけ食べて、安いものだ。
まさに、スペイン・バルセロナの新三ツ星レストラン「ラサルテ」の料理は、「サグラダ・ファミリア(建築家アントニ・ガウディが1882年に着工、2026年に完成予定)」的価値のあるものであった。