【長期休みに、世界の三星レストランに行くバカ(愛すべき)がいる】 | BEST T!MESコラム

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

長期休みに、世界の三星レストランに行くバカ(愛すべき)がいる

世界のミシュラン三ツ星レストランをほぼほぼ食べ尽くした男の過剰なグルメ紀行②

 いまできないことは、年取ってからできるわけがない! 

 僕は、一介のサラリーマンなのだ。いや、会社も食べ物関係ではないし、観光とも関係ない。しかも、いや、もう、やめておこうか。いい機会だから、告白してしまおう。これは、蛇足だが、僕はサラリーマンでも、肩書もないに等しい。清く名もなく恥ずかしく生きている、ひとりの会社員なのだ。別に、開き直って言っているわけでもないが、とにかく、僕は、「一般ピープル」だ。

 東京に住み、都内に鎮座ましますわが会社に、満員の通勤電車に押し合いへし合い乗って通う、どこにでもいるごく普通の会社員の僕が、ゴールデン・ウイークのような長期的な休みの時でもなければ、世界の三ツ星レストラン食べ歩きなどできるわけがない。他は夏休みと年末年始ぐらいだろうか。

 日本の三ツ星なら、夜とか、土日祝日に行けるかもしれないが、(実際、行っている。ただし、自腹)今年のように、行く先の新三ツ星のレストランがスペインのバルセロナにあったのでは、1泊2日というわけにはいかない。

 それに、困ったことに、『ミシュランガイド』のほうも、毎年、毎年、新三ツ星レストランを世界のあちこちに誕生させるものだから、その年に行って食べておかないと、どんどん行かない店がたまってしまう(実際、行った店の記録はすべてメニューや領収書、シェフとの記念写真、サインなど、記録はすべて残してあるから、『ミシュランガイド』に興味のない人から見たら、わが家はミシュラン地獄、ゴミ屋敷に近い)。

 毎年発表されるこの新情報が、僕にはどうしても気になる。知ってしまったら、放っておけないのだ。だから、新しい三ツ星レストランが誕生したら、一週間前後、会社を休めるゴールデン・ウイークにわざわざ出かけるのだ。

「藤山、別に店がなくなるわけはないのだから、定年になってから、退職金を使って、ゆっくり行けばいいじゃないか」などと忠告してくれる友人もいるが、僕は、彼のように、手をこまねいて待っているとか、定年までやりたいことを我慢するとか、そういうことができない。むしろ、その時はなるべく言わないようにしているが、そういうアドバイスをよしとする人間が信じられない。だって、そうだろう。いま、できないことが年取ってからできるわけがないじゃないか。

 つまり、『ミシュランガイド』は、「お前、どうする。また、新しい三ツ星が生まれたよ」と、僕の困った性格をいちいち逆撫でしてくれるのだ。これが、悔しい。いや、笑うかもしれないが、「猫にマタタビ、藤山に新三ツ星」なのだ。 

『世界のミシュラン三ツ星レストランをほぼほぼ食べ尽くした男の過剰なグルメ紀行』より構成〉

KEYWORDS:

オススメ記事

藤山 純二郎

ふじやま じゅんじろう

会社員

料理評論家

東京出身。幼稚舎、普通部、高校、大学と慶應義塾で学ぶ。



祖父は日本商工会議所会頭や初代日本航空会長も務め、



岸信介内閣の外相で大活躍した藤山愛一郎。



純二郎は普通のサラリーマン。



料理評論家の山本益博の薫陶を受け、



89年から『ミシュランガイド』(ミシュラン社)を片手に現在まで28年間、



世界の三ツ星レストランを食べ歩き、全119店中、114店を制覇(2017年9月現在)。



現在も、会社に長期休暇をとっては、三ツ星の美食を「胃袋に」収める。



執筆は、91年『東京ポケット・グルメ〈1992-93年版〉』(文藝春秋)、



95年から『東京食べる地図』(昭文社)、



『ダイブル−−−−山本益博の東京横浜近郊たべあるき』(昭文社)を



95年版から01年版まで記者として参加。


この著者の記事一覧

RELATED BOOKS -関連書籍-

世界のミシュラン三ツ星レストランをほぼほぼ食べ尽くした男の過剰なグルメ紀行
世界のミシュラン三ツ星レストランをほぼほぼ食べ尽くした男の過剰なグルメ紀行
  • 藤山純二郎
  • 2017.09.27