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ED治療は知ることから始まる! 勃起不全の基礎知識

絶賛発売中! 一個人12月号増刊『大人の性愛学』より


男にとって永遠のテーマ「勃起障害=ED」。その克服は一日にしてならず! 健康管理やSEX習慣などといった日頃の心がけももちろん重要だが、ED治療のきほんの「き」は、まずその仕組みを知ることから始まるといっても過言ではないのである!


生活習慣、メンタルなどEDの原因は多種多様

「男性機能の低下、いわゆるEDは加齢とともに進行するといわれていますね。確かにその通りですが、では年齢を重ねると男性機能にどういう不具合が生じるのか、また不具合の原因は何か、詳しく知っている方はそう多くないのではないでしょうか。しかし逆にいえば、原因を突きとめれば解決策の糸口も見えてきます。何事もまずは原因をしっかり把握すること、これが大切なのです」

 こう語るのは、ED治療の専門医である東京・弘邦医院の林雅之院長だ。

 ペニスには海綿体がある。性的な刺激を受けると海綿体に血液が流れ込み、ペニスが膨張する。これが勃起である。

 EDとは簡単にいえば、その海綿体に血液が流入しづらくなる状態にあることを指す。加齢によって血管が萎縮してしまうことで血液の循環が悪くなり、勃起に支障をきたすわけである。

 これは加齢による老化現象であるため、男性なら誰にでも起こり得ることだ。だが問題は、老化の進行具合は人によって様々で、40代から始まった症状が止まることを知らずに進行してしまう男性もいれば、老化のスピードを遅らせることができる男性もいるのである。

 その差はいったい何なのか。またその原因は? EDは糖尿病などの生活習慣病が原因のケースと、心因性ストレスなどのメンタル面が原因のケースのふたつに分けられる。

「糖尿病を患うと動脈硬化が起き、血液の循環が著しく低下します。また神経にも障害が生じ、脳が快感を感じてもペニスに伝達されないのです。その結果、勃起しなくなります。厚生労働省が発表した2015年の調査によると、日本人男性の糖尿病患者数は176万8000人だそうです。この人数がイコールEDとは断言できませんが、潜在的なED患者はかなりの数にのぼるとみていいでしょう」

 一方の心因性EDは、ストレス、不安、うつ病なとから起きる。なんとなく身体が重い、ダルい時に勃起しないというケースは心因性の場合が多く、例えば残業続きで心労が重なった日、売り上げノルマに不安を抱えている夜などに症状が出やすい。また、セックスしようとしたのに勃起しなかった、または中折れしてしまった経験などが一度でもあると、それがトラウマとなり勃たなくなってしまう。こうした症状も、いわば不安が原因だ。

「心因性でさらに厄介なのは、相手の女性によっては勃起することもあり得る点です。例えば“妻だけED”という症状があります。これは奥さんを前にすると萎えてしまうケースです。不謹慎な話ですが、奥さん以外ではみるみる元気になることもあるんですね。男性のメンタルの複雑さが見て取れます」

 また、最近では若い頃にEDを患い、そのまま熟年の年齢に達してしまった男性も少なくないらしい。こうした人は誤った、または過度なオナニーが原因と考えられている。

「男性が自分の手で行なう自慰は、女性の膣内と比べてペニスを包む圧迫が極めて強く、快感も高いのです。そうした自慰に慣れてしまうと、女性器に挿入しても物足りず萎えてしまいます。特にAVの刺激的な映像を鑑賞しつつ自慰をしていた世代には、こうした“マスターベーションED”の傾向がみられます」

 その他にも、健康に良いからとスポーツタイプの自転車に乗りすぎて股間を圧迫し血流が悪くなる、通勤時にノートタイプのパソコンを膝の上に置いて下半身を温めすぎてしまった結果、勃起に支障が出るなど、EDの原因は日常に山ほどある。まさに現代の男性はEDと隣り合わせに暮らしているのだ。

男性ホルモンの分泌量は維持できる

 EDの治療には、バイアグラ・レビトラ・シアリスなどの勃起促進薬の服用が効果的だ。こうした錠剤は、海綿体に血液が流れ込むのを阻害しているPDE5という酵素を抑制する働きをもっている。PDE5を抑えれば血液が流入しやすくなり、勃起を促すというわけだ。

 さらに最近の研究によって、バイアグラなどを服用すると、テストステロンという男性ホルモンの量が体内で2倍に増えたという臨床データもあるという。林先生は、このテストステロン値の上昇に注目している。

「テストステロンは主に睾丸から分泌される男性ホルモンです。睾丸からの分泌を脳が感じ取ると、刺激を受けた脳は大量のドーパミンを分泌させます。ドーパミンは脳内麻薬ともいわれる物質で、これの作用によって男性は攻撃的になり、仕事や異性へのアプローチなどにモチベーションを高めていきます。むろんセックスにも、より積極的になります。テストステロンの分泌は、男が男である証ともいえるのです」

 ところがテストステロンは30歳を超えると次第に分泌量が少なくなり、4050代にさしかかると大きく個人差が現れ始める。

70歳を過ぎても30代の頃と同レベルのテストステロン値を記録する方がいる一方で、40代で極端に減少してしまう人もいるのです。この差は生活習慣病などの影響にもよりますが、最大の原因は好奇心の差のように思えます。女性への関心が高い男性、つまりスケベな方はテストステロン値も高いでしょうし、また服装に気を使うオシャレな方なども同じと考えられます。結局のところ、生きる活力にあふれた男性はテストステロン値が高く、ペニスも硬くなりやすい特徴をもっているといっていいかもしれません」

 事実、男性クリニックの医療現場では、テストステロンを増やす治療が行なわれるようになってきた。

 日本での治療方法は注射による投与と外用薬の服用が多いという。特に男性更年期障害(LOH症候群)には、テストステロンを投与するホルモン補充療法が効果的であることが分かってきた。ちなみにLOH症候群もEDの主な原因のひとつである。つまり昨今では、ホルモン補充療法という新しい治療とバイアグラなどのED治療薬が、いわばワンセットとなって普及し始めているのだ。

「テストステロン療法はアンチエイジング、つまり若々しさを保つ目的にも使われています。若々しさといっても、見かけより血管や内臓を健康に保つことが狙いです。体内が健康であれば、ペニスだっておのずと元気なわけですからね」

 このように、今やEDはホルモン治療のジャンルにまで広がりを見せ、着々と進化しているのである。

*一個人12月号増刊『大人の性愛学』より

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