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堺の墓⑤文化人たちその弐

季節と時節でつづる戦国おりおり第446回

堺・顕本寺には三好長慶の父・元長のお墓がありますが、今回は文化人編の続きということで高三隆達(1527~1611)のお墓を紹介しましょう。

 隆達は安土桃山時代から江戸時代初期の僧で、顕本寺の庵で小唄を蒐集しそれをアレンジしたりオリジナルのものを作ったりと、今なら「小唄ヲタ」と呼ばれ「歌ってみた」とYouTubeで活躍しそうな人物。 彼の隆達節の中でもおすすめなのは
「数ならぬ 身には思ひの なかれかし  人なみなみに 物思ふ」
(小物でしがない自分には、思うことなど無い方が良いのに、人様並みにあれこれ思ってしまう)
というひと節。本来は恋しい人を想う苦しみ、狂おしさに悶える歌なのですが、現代にも通じる不変の恋歌です。そしてその一方で、いっそ考えなければ良いというあたりに当時の狂歌「一期は夢よただ狂え」にも相通じる傾奇者(かぶきもの)の心意気も感じられますね。

こちらは隆達の顕彰碑。『堺鑑(さかいかがみ)』によると隆達は訳あって還俗し高三の実家に戻り、家業の薬種商を営んで後、隆達節を創始したといいます。

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橋場 日月

はしば あきら

はしば・あきら/大阪府出身。古文書などの史料を駆使した独自のアプローチで、新たな史観を浮き彫りにする研究家兼作家。主な著作に『新説桶狭間合戦』(学研)、『地形で読み解く「真田三代」最強の秘密』(朝日新書)、『大判ビジュアル図解 大迫力!写真と絵でわかる日本史』(西東社)など。


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