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韓国人シンガーKが日本の伝統を旅する 「欄間は大きな可能性を秘めたアートだ」

第14回 大阪欄間工芸協同組合理事長 欄間工芸士・木下文男さん 

伝統的な日本建築を語るうえで、欠かすことができないのが“欄間(らんま)”です。日本古来の木造建築物の茶の間や客間などの、かもいの上に取り付けられる欄間。高度な職人技で仕上げられた美術品のように精巧な欄間もありますが、もともとは、光や風を取り込むという実用性を重視されて作られました。
その起源は古く、奈良時代に寺院仏閣に用いられたのが始まりと言われています。その後、貴族が自身の住居へ広め、江戸時代になると一般庶民宅でも使われるようになりました。欄間技術は、次第に木々の流通が多い大阪で発展していきます。木工職人たちの彫刻は屋久杉の木目を生かす美しい作品となり、欄間にとどまらず、ついたてや額縁など様々な形となって、現在にまで受け継がれているのです。

 京都から大阪湾へそそぐ、淀川の右岸にある摂津市。摂津という名称には歴史があります。およそ1300年前の奈良時代。奈良は大倭(ヤマト)、京都は山背(やましろ)と呼ばれていた時代、大阪の北部から兵庫の一部にかけて、存在した摂津の国がその由来です。そんな歴史豊かな摂津市にある木下欄間店へKさんは足を運びました。

 

 さっそく大阪欄間工芸協同組合理事長、欄間工芸士・木下文男さんの仕事に目を見張ります。三重県伊賀市にある新堂寺。本堂に見える装飾も木下さんの手によるものです。彫り込まれた鳳凰が鮮やかに生まれかわります。

K こんにちは。今、非常に力強くノミを振るっていますが、どんな作業なんでしょうか?

 

木下 今はあら彫りといって、ゲンノミでガンガンと叩いて荒く彫っているんですよ。

K 思ったよりも分厚いですね。

木下 これは厚さが6センチあるんですよ。まあ、モノによって、いろいろで、1センチくらいのものもありますが。

K 完成までにどれくらい時間がかかりますか?

木下 これでしたら半年以上ですかね。厚さの決まった板のなかで、いかに立体感を出せるのかが、職人の腕の差になるんですよ。

K なるほど。ところで非常にたくさんの道具がありますが、ノミだけでもいろいろありますよね。

 

木下 ノミだけでも何百とあります。種類も多いですよ。たとえば、仕上げに使う仕上げノミだけでも、数多くありますね、仕上げではノミをたたく必要がないので、持ち手の後ろに金属がついていないんですよ。そして、内丸ノミと外丸ノミ。これら道具は自分で作るんですよ。

K 道具をですか?

木下 はい。

K では、まずその道具のお話から聞かせてください。

木下 先ほどのノミなどは、彫刻の道具なんです。そして、こういう透かし細工にはまた違う道具が必要なんです。

K 鋭いですね。透かしの道具は。

 

木下 鋸でひいたところを綺麗にするんですよ。繰小刀(くりこがたな)といいます。研いで研いで、小さくなるまで使います。小さいものは小さいもので使い道があるんですよ。道具と言うと大まかにはそれくらいです。残りは、そのときそのときで、必要な道具を自分で作ったり、鍛冶屋さんに頼んだりして手配します。だから1度しか使わない道具もあります。

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寺野 典子

てらの のりこ

1965年兵庫県生まれ。ライター・編集者。音楽誌や一般誌などで仕事をしたのち、92年からJリーグ、日本代表を取材。「Number」「サッカーダイジェスト」など多くの雑誌に寄稿する。著作「未来は僕らの手のなか」「未完成 ジュビロ磐田の戦い」「楽しむことは楽じゃない」ほか。日本を代表するサッカー選手たち(中村俊輔、内田篤人、長友佑都ら)のインタビュー集「突破論。」のほか中村俊輔選手や長友佑都選手の書籍の構成なども務める。


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