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まるでスキー場……全国で一番きつい「急勾配あり」標識は恐怖の連続だった

【毎月20日更新】世にも奇妙な道路標識 第5回:急坂に咲く標識

◆全国で一番きつい「急勾配あり」を見に行ってみた!

 ということで現地を訪ねてみた。場所は武蔵大和駅から歩いて十数分。多摩湖の南側、意外にも住宅街の中にそれはあった。両側に民家が立ち並んでいるが、なるほど確かにえらい急坂である上に道幅も狭く、ちょっと車では尻込みしてしまう場所である。

写真を拡大 恐怖の37%坂(東京都東大和市)

 坂の下に見える民家は大丈夫なのだろうか、車など突っ込んできたりしないのだろうかと思いつつ近づいていくと、なんとこの標識の先は階段になっており、頑丈な車止めが立てられていた。車両の通り抜けができない場所に、この標識は立っているわけである。

 という状況なのでもっと写真を撮りたかったのだが、残念ながらそれは果たせなかった。というのは、標識を求めてうろついた挙句にようやく筆者が現物を発見した瞬間、後ろから一台のプリウスが近づいてきたのである。なんだろうと振り返ったところ、降りてきたのは二人の警官であった。

 どうやら、カメラをぶら下げてきょろきょろあたりを見回しながら歩く中年男をパトロール中に発見し、不審人物として筆者をマークしていたらしい。まあこれはおっしゃる通り誰がどう見てもパーフェクトに怪しく、疑われても全く文句を言える立場ではない。

 幸いにもたまたま自著を持ち合わせていたので、自分はこういう本を書いているライターである、今回は日本一の急勾配の標識を撮影に来たのだと冷や汗をかきながら説明したところ、どうにか10分ほどで放免してもらえた。その後、警官2名に見守られつつ撮影したのが先の写真である。じっくり周囲の写真を撮って回る太い神経の持ち合わせは筆者にはなく、早々に退散したのであった。

 いずれこの場所を再訪し、どうしてこの状況ができあがったものか、調査をしてきたいところではある。まあその時には、周囲のご迷惑にならぬよう気を配って行かねばなるまい。同好の士の皆様も、ぜひ気をつけていただきたいと思う次第である。

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佐藤 健太郎

さとう けんたろう

1970年兵庫県生まれ。東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了。大手医薬品メーカーの研究職を経て、サイエンスライターとして独立。文系の読者にもわかりやすい解説で定評があり、東京大学大学院理学系研究科の広報担当特任助教として東大の研究実績を対外発信する業務も担当した。『医薬品クライシス』(新潮新書)で2010年科学ジャーナリスト賞、2011年化学コミュニケーション賞を受賞。著書はほかに、『「ゼロリスク社会」の罠』『化学で「透明人間」になれますか?』(ともに光文社新書)、『炭素文明論』(新潮新書)、『ふしぎな国道』『世界史を変えた薬』(ともに講談社現代新書)などがある。


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