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【非正規雇用の教員問題】教員の雇用形態について考える

第46回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

■非正規雇用の教員志望者は少ない

 ただし、その非正規雇用も簡単に集まるわけではない。9月25日付の『教育新聞』が、「きめ細かい条件のすり合わせで臨時採用の応募者を増やそうと、婚活や趣味などまで支援する独自の採用プランを、北海道教委が始めた」と報じている。臨時採用は非正規雇用となる。

 記事によると、部活動を担当したくなければ、しなくてもいい学校を紹介する。車の運転をしたくなければ、運転しなくてもいい学校を紹介する。特技を活かしたければ、それが可能な学校を選択する。
 さらに、婚活を希望するなら、同世代の独身者が複数勤務する学校を紹介する。お金を貯めたければ手当の大きい学校を紹介する…といった具合だ。

 応募者にとっては、好条件をズラリと並べられたようなものなのだろうか。これはつまり、そうまでしなければ応募者が集まらないということだ。実際、北海道教委がこうした条件を並べたのは、募集しても応募者が集まらないからである。

  しかし、非正規雇用の教員志望者は、こうした条件を望んでいるのだろうか。否定する人はいないだろうが、そのために応募するという人がどれくらいいるのだろうか。こういった条件を優先するなら、一般企業のほうが良かったりしないのだろうか。

■非正規雇用教員が活躍できる環境づくり

 非正規雇用教員でも、学級担任を任されるケースは多い。正規雇用と同等の仕事量と、そして責任を負わされることになる。それでも年収ベースでは、非正規と正規では大きな差がある。安定についての保証は言うまでもない。
 さらに、非正規雇用が正規雇用に対して軽く見られる傾向は否めない。それは、一般企業と同じなのだ。

 そして、発言権もないに等しい。「校長や学校に対して批判的なことを言えば、次の契約に支障があるので、怖くて言えない」と、ある非正規雇用の小学校教員は言った。そういう現実が歴然とある。
 北海道教委が並べている条件には、そうしたことには一切触れられていない。どこの教育委員会も、そして文科省も問題にしないようにしている。それでいて非正規雇用の教員を増やしていこうとしているのだから、大きな問題である。「穴埋め」に使うだけ使って、あとは知らぬ存ぜぬを決め込む姿勢が見えみえの姿勢では、非正規雇用の教員の希望者が増えるはずもない。非正規で補おうとしても、補えない現実と向き合わなければならないことになるだろう。

 教員採用試験の応募者が減っていることで「教員の質が確保できない」という声がいろいろなところで挙がっている。
 非正規雇用教員で凌ぐ考え方そのものと、非正規雇用の働く条件を根本から変えないままに非正規雇用に頼る方針をとりつづければ、それこそ教育の質が心配される事態になってしまうのではないだろうか。

 

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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