座布団のヘコみ一つ見逃さない。加藤一二三氏が考える「本物の勝負師」とは? |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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座布団のヘコみ一つ見逃さない。加藤一二三氏が考える「本物の勝負師」とは?

加藤一二三さん9月毎日更新 Q4. 将棋の世界にも「駆け引き」はあるのでしょうか。

会食の場でも対戦相手を揺さぶる

 大山名人の本にこんなエピソードが書いてありました。将棋界の習わしで、対局の前日に関係者一同食事を共にします。そして大山名人は後輩の挑戦者と戦う時には対局の2~3日前から食事の量を減らしていたそうです。どういうことか。

 これは、挑戦者に「しっかりと食べている光景」を見せつけるため。当時、大山名人はご高齢でしたから毎日しっかりとご飯を食べていると対局の前日はあまりお腹が空かなくなる。ですから、事前に食事を減らしておき、否が応でもお腹が空いているから前日にたくさん食べられる。そうして、後輩の対戦相手に「どうだ!」と見せつけたと。こう書かれていました。

 大山名人はこのような駆け引きができる勝負師です。翻って私は駆け引きができるタイプではない。私としては、将棋の戦いというものはベストコンディションで良い手を指せば勝てると思っている。しかし、大山名人は自分も、もちろんベストコンディションで一所懸命戦うけども、同時に相手にプレッシャーをかけたりすることも考えた。そしてそれを実行できた方です。

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