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10月1日、「近くて一番遠い国」の建国記念日【71年前の今日:中華人民共和国建国】

平民ジャパン「今日は何の日」

■「嫌中」する日本の「負け犬の遠吠え」

 内閣府世論調査では、中国に対して親しみを感じる人が、昭和の終わりには8対2で圧倒的に多かったのに、平成に入って拮抗をはじめ、2004年から完全に逆転、年々親しみを感じる人が減り、感じない人が増えている。割合は2対8だ。

 2016年には、日中関係が良好ではないと感じる人が85%を超えた。親しみを感じるか、感じないかは、とどのつまり、知っているか、知らないかということだ。親しみを感じることがないとは、ネガティブな印象を与える事象が多いということだ。訪問したことがあるか、友人知人がいるか、その国の文化に興味関心があるか、これで全く違った結果になる。

 団体バス旅行で爆買いだった中国観光客も、日本人の農協ツアーがそうだったように、ここ数年変わってきた。自分たちそれぞれの目的をもって来る人も増えている。それはアニメ、古美術、B級グルメ、ガイドに頼らない街歩きだったり、投資先を探す旅だったり、多様化を遂げている。しかし、中国人のマナーの違いや違和感が強烈に刷り込まれたまま、修復困難なレベルまで固定し始めている。

 その固定は、これからも続くであろう。なぜか?

 はっきり言おう。もう日本は中国に「国力」で勝てないことを無意識に知っているからだ。人口だけでなく、学力も軍事力も、そして自らを戦後世界の奇跡と自認した経済までも。

 例えば、学力。OECD(経済協力開発機構)が義務教育修了段階の15歳を対象に行う国際学力調査(PISA)では、「読解力」「数学的応用力」「科学的応用力」の全3分野で中国(北京・上海・江蘇・浙江)が断トツの1位となった。日本人生徒の読解力は15位。
 ますます下がっている。
そもそも本を読まないことから始まって、ものを考えない、表現できないという傾向が強まっている。近未来の日本人は、どんなになっていくのか。この調査の狙いは「実生活で直面する課題に知識や技能を活用できるか」を見るものだ。忖度力ばかり高くても、それができない日本人が増えていったらヤバかろう。

 例えば軍事力。漠然と脅威を感じながらも、いつもアメリカに頼りきり、日本人はどこかで中国をなめている。アメリカに比べたら中国の軍事力はまだまだ、ぜんぜんと言っているうちに、軍事パレードには出てこない海軍は海上自衛隊を凌駕した。米軍の支援がなければ、尖閣諸島は自力では守れない。国民一対一の白兵戦でも、勝てる自信はないだろう。

 例えば経済。いまの中国には、移動通信、自動化、AI、センサー、ブロックチェーンはじめ、世界のトップに躍り出るテクノロジーがある。国際特許出願数もアメリカ、日本を抜いて世界一だ。

 中国には物量でも能力でも勝てない。悔しかろう。

 残念ながら、「負け犬の遠吠え」が、嫌中する日本人の現実だ。

 

■では、中国に盲点はないのか、いや「ある」

広大な国土におけるコロナ対策にも治安維持にも、莫大な金がかかっている。国内、党内には反対勢力が虎視眈々と狙っている。力で押さえつけているが、暴動や反乱が起きるマグマが全土にたまっている。中国共産党はたくさんの派閥の連合体だ。党中央における権力闘争は永続する静かな内戦だ。政敵は逮捕され、長期投獄され、党籍もはく奪される。本人だけでは済まない。一族郎党、派閥を挙げた、命がけの戦いだ。終身主席を目指して任期撤廃はしたが、現代の中国皇帝、習近平政権も意図したほど長くは続かないだろう。じつは習近平自身が無理をするほど、中国共産党の寿命を縮めているのかもしれない。
 国慶節の日付も、義勇軍行進曲の歌詞も、いずれまた変わることを前提に、ジャパンもまた永遠ではないと知ることが必要だ。

一党独裁の共産党が治める中央集権国家だが、同時に世界第2位の経済が、世界市場の中で成長してきたことを忘れてはいけない。そして、これから世界を形作るテクノロジーをリードし始めていることは無視できない。メディアによるイメージ操作に踊らされていては、中国の姿は見えないし、それと向き合う日本の姿も見えない。
 中国共産党の一党独裁が崩れた後を見据えなければならない。中国の格言や「三国志」をちょっと知っているだけで、中国を知った気になるのは大間違いだ。政府の番犬化したメディアが記号化した嫌中ニュースに感情的に反応して、うっぷんを晴らしても、1円にもならない。いいことは何も無い。にぎやかな観光客がぴたっと止まり、街が静かになってよかったと宣うのは、経済と無縁なネット民か、まだ会社がつぶれていないサラリーマンだけだろう。もはや経済的な依存度を減らすことは難しい。

 

■中国をディスる日本の民度が下がれば「奴隷化」する

 10年後、20年後、そして30年後、中国はどうなっているのか。

 日本人は中国とどうつきあっているのか。

 指をくわえて中国の経済力と軍事力だけを見ていても何も見えない。お客さんのマナーをディスっているうちに、中国人だってだんだん洗練されていく。へたをすると、こちらの民度が下がって、マナーの優劣すら逆転するかもしれない。衣食足りて礼節だ。貧すれば鈍するだ。失われた30年で、日本の教育も失われている。さらにコロナでいっきに悪化していることは間違いない。

 はっきりしているのは、脊髄反射の嫌中言説で留飲を下げる平民が増えれば増えるほど日本は劣化する、ということだ。その間に日本人の学力も下がり続ける。ヒラメだらけになってしまった日本の報道機関において、上層部は政府の顔色を見る。記者はデスクの顔色を見る。特派員の質も下がるところまで下がった。中国に関する情報はますます乏しいどころか、政府の提灯持ちだ。そのツボを心得た新首相は、報道人を補佐官に抜擢した。

  政府は教科書、靖国、爆買い、尖閣と、平民の感情レセプターに投げ込むだけの記号情報で、対立感をあおる。平民は平民で隣国と隣人を知る努力をしないと、世界の動きからは今後さらに取り残されていく。ろくに情報の無いまま、明治・大正・昭和の日本人のように、中国を上から見ていたら、とんでもないことになる。

   かつて平民を煽りに煽って、おかしな空気をつくり、日本を滅亡寸前に導いたのは新聞だということを忘れてはいけない。

 中国語では一般大衆を「老百姓」と書く。ジャパン老百姓は、基礎学力と情報量で、そして体力でチャイニーズに負けてはいけない。国慶節の今日、義勇軍行進曲に我々のジャパンをあてはめて歌おう。

 「奴隷になることを望まぬ者たちよ、起ち上れ」「敵の砲火に向かって進め」前進!前進!前進!進め!千代に八千代に!苔のむすまで。

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猫島 カツヲ

ねこじま かつを

ストリート系社会評論家。ハーバード大学大学院卒業。

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