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元教員が提言「教師は尊敬に値しない人物でも問題ない」

尊敬されない教師が生まれた理由

◆「尊敬に値する」と見なされていれば、それでいい

 そういう暗黙の「世間智」によって、権威衰えたりとはいえ、いまだ世間の常識でも学校のシステムでも「教師を特別扱いする気風」は消滅してしまったわけではない。そして、どんな子ども(生徒)でも教師を「尊敬」する気持ちを持っている方が、教育(学習)の成果は上がるのである。
 結局、子ども(生徒)が自己を小さいものとして謙虚に眺める姿勢を持つからであろう。

 子どものときから「あの先生はたいしたことない」と思っているより、「あの教師は信用できる」と思っていた方が勉強も人格形成も進むに決まっている。子どもはあまり早く自立しない方がいい。学ぶということは自分が学ぶ者としてまだ「小さい存在」であるという自覚が必要だからである。
 もちろん、いい教師、ダメな教師を見分けるのも子どもの成長にとっては必要なことではあろうが、子どものときは他人を値踏みする習慣を身につけないで、「信頼」から歩み始めるのがいい。
 たかが教師なのだから、「尊敬」しても子どもの魂のすべてが染められるわけはない。

 あまり教育を過大視しない方がいい。その教師が客観的に見て「尊敬に値しない人物」であってもかまわない。「尊敬に値する」と見なされていればいいのである。これが教師が「尊敬を必要とする」ことの真実の一端である。
 いま、その必要性に改めて気づかなくてはならないときに差しかかっている。

〈『尊敬されない教師』より構成〉

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諏訪 哲二

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~プロフィール~

1941年千葉県生まれ。「プロ教師の会」名誉会長。作家。東京教育大学文学部卒業。埼玉県立川越女子高校教諭を2001年3月に定年退職。「プロ教師の会」は、80年代後半に反響を呼んだ『ザ・中学教師』シリーズ(宝島社)をはじめとして、長年にわたり教育分野で問題提起を続けている。著書に『なぜ勉強させるのか?』『間違いだらけの教育論』(以上、光文社新書)、『オレ様化する子どもたち』『「プロ教師」の流儀』(以上、中公新書ラクレ)など。


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