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名古屋に「極楽」があった。でも「極楽行き」が難しい!

名古屋地名の由来を歩く【面白地名②】

「極楽小学校」「極楽苑」「極楽のりば」

 さて、この「極楽」だが、町名に特に深い歴史があるというわけではない。昭和54年 (1979)に猪高町大字高針から「極楽」となったことを見てもわかるように、比較的最近のことである。高針にもともとあった字名から 「極楽」 としたというのだが、 『猪高村誌』 には、 次のような話が載っている。

 名古屋市の西側は西庄と呼ばれる低地が続き、木曽川・庄内川などの度重なる洪水で多くの被害を受けてきた。そこで、住民は安住の地を求め、山深からず、水多からずのこの高針の地を発見して、ここを安住の地と決め、 「極楽」とした。

 確かに近年の洪水や津波の被害の大きさを考えると、ここが「極楽」であることは確かなようだ。

 どこを見ても「極楽」ばかりだが、やはり「極楽小学校」が目を引く。 「極楽保育園」 「特養老人ホーム極楽苑」なんてものもある。

 そしてバス停に「極楽のりば」というのを発見した。このバス停は「極楽から乗る」と いう意味だが、一瞬「極楽への乗り場」というふうに思えた。やはり人間、極楽に行きたいのである。 「極楽」という町名はあっても「地獄」という町名はあり得ない。

〈周辺ガイド〉

猪高緑地:名東区猪高町にある自然の森が「猪高緑地」 。もともとは名古屋市と隣接する愛知郡長久手町にわたる森だったが、長久手町側は完全に開発されてしまったために、行政と民間が一緒になって自然保護を進めた結果、残ったのがこの森である。 「オアシスの森」という別名があるように、本当に自然のままの森が残されている。

『名古屋地名の由来を歩く』(著・谷川彰英)より構成〉

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谷川 彰英

たにかわ あきひで

筑波大名誉教授

1945年長野県生まれ。ノンフィクション作家。東京教育大学(現・筑波大学)、同大学院博士課程修了。柳田国男研究で博士(教育学)の学位を取得。筑波大学教授、理事・副学長を歴任するも、退職と同時にノンフィクション作家に転身し、第二の人生を歩む。筑波大学名誉教授。日本地名研究所元所長。主な作品に、『京都 地名の由来を歩く』シリーズ(ベスト新書)(他に、江戸・東京、奈良、名古屋、信州編)、 『大阪「駅名」の謎』シリーズ(祥伝社黄金文庫)(他に、京都奈良、東京編)『戦国武将はなぜ その「地名」をつけたのか?』 (朝日新書)などがある。

 

 

 

 

 

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  • 谷川 彰英
  • 2011.10.08