【千葉「地名」ケンミン性】初出は『万葉集』知波乃奴乃(ちばののの)たくさんの葉が生い茂ったことから由来《47都道府県「地名の謎」》 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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【千葉「地名」ケンミン性】初出は『万葉集』知波乃奴乃(ちばののの)たくさんの葉が生い茂ったことから由来《47都道府県「地名の謎」》

【全国地名由来辞典】県や町の名前から郷土のドラマをひもとこう!_千葉県


 日本の地名は世界でも稀に見るほどバリエーションが豊富。
 地名の由来を探ると、多様な地形、自然を愛でる表現性、ふるさとを思う民俗性など、この国の原点が見えてくる。
 読者のみなさんの故郷はどちらですか? 地名は・・・
 日本人ならなぜか初対面でも話が弾む出身地・県民性・そして地名雑学‼️
 ようこそ! 地名の奥深い世界へ‼️


■名族「千葉氏」の本拠地

酒々井町にある円福寺の境内に「酒の井の碑」が残る。提供/千葉県観光物産協会

《千葉県の由来》たくさんの葉が生い茂った場所

「千葉」とは、たくさんの葉が生い茂ったことを意味する。『万葉集』には、防人として筑紫に派遣された大田部足人(おおたべのたりひと)が、天平勝宝7(755)年に詠んだ歌の冒頭に「知波乃奴乃(ちばののの)」として登場している。古来、「千葉郡」と呼ばれていたのは、現在の千葉市、習志野市、八千代市などを含む地域で、中世にはこの地で勢力を誇った千葉常胤(つねたね)が、石橋山の合戦に敗れた源頼朝を助け、鎌倉幕府の樹立に大きく貢献した。千葉県となったのは明治6(1873)年である。


《地名の由来》

◉行行林(おどろばやし):草木が乱れ茂った状態

 昭和30(1955)年まで船橋市にあった町名(現在は鈴身町)で、江戸時代には「行行林村」とされていた。「オドロ」とは「棘」、つまり「草木が乱れ茂っている状態」を意味する語で、古語の「おどろおどろし」につながる。

◉酒々井(しすい):井戸から湧き出た酒

 昔、酒好きの父親のために、毎日酒を買って帰る孝行息子がいた。ある日、どうしても酒を買えず途方に暮れていると、道端の井戸から酒が湧いてきたため、毎日井戸から酒をくんで飲ませたとの伝承にちなむとされる。

◉蘇我(そが):蘇った蘇我氏の娘

 弟橘媛(おとたちばなひめが海神を鎮めるため入水した際、ほかに5人の姫も海に身を投じた。そのうちのひとりが蘇我氏の娘で、娘は無事に浜にたどり着き、「我蘇り(われよみがえり)」と叫んだことから、この地名が生まれたという伝承がある。

◉匝瑳(そうさ):美しい麻のとれる土地

 大化の改新以前は「狭布佐(さふさ)」で、「さ」は「美しい」、「ふさ」は「麻」を意味し、「美しい麻のとれる土地」であったとする。なお「匝瑳」という表記は、「さふさ」に縁起のよい漢字をあてたものと考えられている。

(2020年一個人5月号から

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谷川 彰英

たにかわ あきひで

筑波大名誉教授

1945年長野県生まれ。ノンフィクション作家。東京教育大学(現・筑波大学)、同大学院博士課程修了。柳田国男研究で博士(教育学)の学位を取得。筑波大学教授、理事・副学長を歴任するも、退職と同時にノンフィクション作家に転身し、第二の人生を歩む。筑波大学名誉教授。日本地名研究所元所長。主な作品に、『京都 地名の由来を歩く』シリーズ(ベスト新書)(他に、江戸・東京、奈良、名古屋、信州編)、 『大阪「駅名」の謎』シリーズ(祥伝社黄金文庫)(他に、京都奈良、東京編)『戦国武将はなぜ その「地名」をつけたのか?』 (朝日新書)などがある。

 

 

 

 

 

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