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なぜ今、教師の「権威」は失墜しているのか?

尊敬されない教師が生まれた理由

◆「公的なもの」は後退し、「私的なもの」が前進した

 子ども(生徒)のありようも私的エゴによる経済主体の傾向を強く示してくる。共同体的なものに支えられない個人が登場し、自己の利益、自己の基準に沿って自己主張するようになる。

 その結果、1980(昭和55)年を越えて教育問題・学校問題(校内暴力、不登校、いじめ、家庭内暴力、高校中退、ひきこもり、学力低下等)が多様に噴出することになり、特に公立学校の「教員のちから」が大きく後退し、教育・学校のちからの減少とともに、教師の権威の失墜、すなわち、「尊敬されない教師」が登場してくることになった。

 そして、国民の教育の指導機関であるはずの「教育行政」(文科省、教育委員会)がサービス機関化して、「民間のちから」に追随するようになる。教育・学校を変えたのは「民間のちから」(経済のちから)であり、つまりは、市民社会的なちからだったのである。

 教師の権威の失墜は教育・学校における「公的なもの」の後退、「私的なもの」の前進、教育の公共性の低下、教育の市場化の結果として生じた。長いこといわれている「教育の荒廃」の原因は「消費社会化」による社会構造、社会意識の変化によるものである。
 それを直接に動かしたのは「民間のちから」の私的利益追求のエゴによるものなのである。つまり、親と生徒である。
 かくして、全国的に私学の隆盛の時代となったわけである。子ども(生徒)の経済的な交換価値を高めるためである。

〈『尊敬されない教師』より構成〉

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~プロフィール~

1941年千葉県生まれ。「プロ教師の会」名誉会長。作家。東京教育大学文学部卒業。埼玉県立川越女子高校教諭を2001年3月に定年退職。「プロ教師の会」は、80年代後半に反響を呼んだ『ザ・中学教師』シリーズ(宝島社)をはじめとして、長年にわたり教育分野で問題提起を続けている。著書に『なぜ勉強させるのか?』『間違いだらけの教育論』(以上、光文社新書)、『オレ様化する子どもたち』『「プロ教師」の流儀』(以上、中公新書ラクレ)など。


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  • 諏訪 哲二
  • 2016.01.09