忘れられない味③どんなセレブでも簡単に食えない野菜料理とは?【ミシュラン完全制覇への道】
タイヤ屋のガイドブックに取りつかれた漢(おとこ)魂の五皿目
■冬季はたどり着けないレストラン?
お金持ちでも食べられない理由、第二。
この「ミシェル・ブラス」という店、なんと、毎年11月中旬から3月末まで、完全休業である。雪で道が通行できないのだ! もちろん、雪深いフランスの田舎だということもあるけれど、そんなところに三ツ星レストランがあるのだから、藤山も、行って食べてみたいと思うわけだ。
ちなみにミシェル・ブラス(1946~)とは、この店のオーナーシェフの名前。彼は、地元の中学を卒業すると、両親の経営する地元の小さな食堂を手伝い、その後、店のあとを継いだ。したがってパリに修業に出たこともなければ、師匠もいない。先生をあえて挙げれば、母親かもしれない。
そんな三ツ星レストランの名物料理が「野菜のガルグイユ」だ。冒頭で「この料理はいくらお金持ちでも、そう簡単に食べられない」と言った理由がおわかりだろう。
さて、やっとの思いでたどり着いた「ミシェル・ブラス」で、僕たちはさっそく、噂の「野菜のガルグイユ」をオーダーした。
「ガルグイユ」とは、この地方独特の郷土料理で、基本的にはジャガイモと生ハムを煮込んだこの地方の郷土料理だが、シェフは、それをもとに、50種類以上とも言われる四季折々の香草や若野菜、野の花やキノコなどを茹ゆで、バターと生ハムで見事にまとめ、大皿に乗せて出す。
僕たちもさっそく、味わってみた。
「うーん。なんだ、この野菜本来の深い味は……」
サラッとしたソースとバターにやさしく包まれた、それぞれの茹で野菜の微妙な味のちがいが、生ハムの肉汁と見事にからんで、口の中で炸裂する。次の野菜を口に入れれば、また、異なる野菜がその本来の持ち味を発揮する。
「地元の新鮮な野菜って、こんなにおいしいんだ!」
本当に野菜のピュアな味がする! まったく、文句なし。健康にもよし! これまで僕が食べた最高の野菜料理がそこにあった。
なお、平成14(2002)年に北海道洞爺湖畔の「ザ・ウインザーホテル洞爺リゾート&スパ」内に唯一の支店「ミシェル・ブラス トーヤ・ジャポン」(『2017北海道特別版』では二ツ星)を開店したから、日本でもこの料理は食べられる。(※注)
だが、可能であれば、わざわざ現地まで出向き、食べてみることをおすすめする。なぜなら、フランス本店の味を100%再現しているとは言い難いからである。
できれば、パリからの昼食の日帰りではなく、1泊して最高クラスの朝食もぜひ召し上がってください。
※注:「ミシェル・ブラス トーヤ ジャポン」は2020年4月30日、閉店しています。
(六皿目へ続く)
- 1
- 2
KEYWORDS:
星の意味するところとは、以下の通り(ミシュランガイドのホームページより引用) 三つ星・・・そのために旅行する価値のある卓越した料理 二つ星・・・遠回りしてでも訪れる価値のある素晴らしい料理 一つ星・・・そのカテゴリーで特においしい料理 ビブグルマン・・・コストパフォーマンスの高い飲食店・レストラン。丁寧に作られた良質な料理が手頃な価格で食べられる お勧めのお店・・・星、ビブグルマンはつかないけれども調査員お勧めの飲食店・レストラン