同じ壁にぶつかった編集者とタッグ

――2011年に着想を得てから、実際に本作を出版されるまでの間、どのような準備を進められてきたのですか?

『うつヌケ』KADOKAWA
写真を拡大 『うつヌケ』12ページより

 その翌年に、鬱を脱出するきっかけとなった本と出会い、自己肯定のための暗示をかけて、だいぶ気持ちが明るくなって、転職もしてずいぶん気持ちが上向いていました。ちょうど時を同じくして、知り合いの竹熊健太郎さんが京都精華大学でマンガを教えていると電話が入ります。私も前々から大学で教えたいという気持ちがあったので、お手伝いしたいと申し出たのですね。興味のあった仕事に就くことができて、さらに気持ちが上向きになって、そのときには「鬱脱出の漫画を描こう」という気持ちにはなっていました。

 ただ、以前『ツレがうつになりまして』というコミックエッセーが大ヒットしたのですが、当時、鬱の渦中にあった僕は、それを読みたいとは思えませんでした。だから僕の中では、「鬱の人は、鬱脱出法の漫画は読まないだろう」という仮説ができあがってはいたのです。

 でも、この貴重な体験を何かしら記録に残さない手はないだろうと、ダメもとでツイッターで、編集者と出版社を募集したら、ものの30分で角川書店さんから返事をいただいたんです。実は、他にも何社か大手出版社からオファーがあったのですが、どれも「鬱は絶対売れます!」という強いメッセージばかり(笑)。それに引き換え、最初にお返事をいただいた角川書店の編集者の方は、ご自身も鬱で悩んだ経験があるという。もう、「その人と組む以外の選択はないな」という気持ちでスタートをきったのです。