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たかがマダニ、されどマダニ ~ダニ媒介感染症。その症状や致死率は?~

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■おもなダニ媒介感染症。どんな症状?致死率が高い!?

 さて、ひとくちに「ダニ媒介感染症」と言ってもたくさんの種類がありますし、潜伏期間、症状、致死率などもそれぞれ変わってきます。ここでは日本で発生している「ダニ媒介感染症」の有名な症状について説明していきますね。

●回帰熱 
 日本では主にボレリア属の細菌「ボレリア・ミヤモトイ」を保有するマダニ類に咬まれることにより細菌が体内に侵入し、感染します。ダニにさされてから、潜伏期間は12~16 日程度で、発熱や頭痛、筋肉痛など風邪のような症状、時に、神経症状(意識障害、けいれん、昏睡)、リンパ節腫脹、呼吸不全、出血症状(歯肉出血、紫斑、下血)が現れます。高熱は3~6日ほど続き、重症になると、心臓、脳、肝臓などに障害が起こり、死亡することもあります。
 厚生労働省の「マダニ回帰熱に関するQ&A」によると、ヒトからヒトへの感染や動物からの直接の感染事例はないそうです。この「ボレリア・ミヤモトイ」を保有するマダニは本州中部以北の山間部(標高1200m以上)や寒冷地に生息しており、北海道では平地でも見られます。治療には適切な抗生物質によるものが有効で、予防を目的としたワクチンは開発されていないようです。
 なお国立感染症研究所(以下NIID)によれば、海外ではシラミやヒメダニからの感染もあり、ボレリアについても「ボレリア・ミヤモトイ」だけでなく、十数種類のボレリアが原因となっているようです。

●ダニ媒介脳炎
「ダニ媒介性脳炎ウイルス」による感染症で、「ヨーロッパ亜型」、「シベリア亜型」、「極東亜型」の3タイプに分類されています。日本においては北海道に存在するウイルスが「極東亜型」に属しています。主にウイルスを保有するマダニに刺されることにより感染しますが、加熱処理されていないヤギの生乳を飲んだりすることでも感染します。
 NIIDによれば「極東亜型」のウイルスに感染すると、頭痛・発熱・悪心・嘔吐等の髄膜炎症状が見られ、さらに脳脊髄炎を発症すると精神錯乱・昏睡・痙攣および麻痺などの中枢神経症状を起こします。「極東亜型」のウイルスに感染した場合、3タイプの中で最も重篤で、その致死率はなんと20%~40%、生残者の30~40%に神経学的後遺症がみられるといわれています。ダニ媒介脳炎は日本での発生事例はまだ少ないですが、海外では毎年1万から1万5千ほど発生しているので油断はできませんね……。この感染症は発症した場合治療法はなく、特異的な薬物療法は存在しないみたいです。
 また予防を目的としたダニ媒介性脳炎ワクチンがあるようですが、日本では未承認となっているみたいですね。

●ツツガムシ病
 ダニの仲間である「ツツガムシ」の持つOrientia Tsutsugamushi(オリエンティア・ツツガムシ)というリケッチア(細菌より小さくウイルスより大きい微生物)による感染症で、ツツガムシにさされることによって発症します。潜伏期間は5~14日で、その後悪寒を伴う38~40℃の高熱が生じます。頭痛、筋肉痛、全身倦怠感を伴い、発症2~3日後に全身に1~2cmの紅色、もしくは紫色の斑点が現れます。放置するか治療が遅れれば、脳炎、肺炎の合併や心不全で死に至る場合もあります。
 世界では年間100万人程度感染している可能性があり、日本における年間感染も400例~500例と、とても多い事が特徴です。日本では北海道を除く全国で発生が見られ、野山、河川敷などは注意が必要です。
治療には適切な抗菌薬によるものが有効ですが、予防を目的としたワクチンは開発されていないようです。

●日本紅斑熱
 日本紅斑熱は、病原体リケッチアであるリケッチア・ジャポニカを保有するダニに咬まれることにより感染する感染症です。日本では近年増加傾向にある感染症で、NIIDの病原微生物検出情報によれば2019年には日本全国で318名の患者の発生報告がありました。そのうちの13例が重症化して死亡しています。(致命率4.1%, 13/318)潜伏期は2~8日程度で、発熱、皮疹(手足から全身にひろがる)、倦怠感、頭痛、全身痛などの症状で発症し、重症化すると死に至ります。冒頭での野良猫に噛まれた事例は日本紅斑熱での死亡事例です。
 病原体「リケッチア」を保有するダニは千葉以西の太平洋側を中心に発生が見られ、近年では、青森や新潟などに拡大しています。治療には適切な抗菌薬によるものが有効ですが、予防を目的としたワクチンは開発されていないようです。

●重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
 主にSFTSウイルスを保有するマダニに刺されることで感染する感染症です。2011年に初めて特定された新しいウイルスによるものです。潜伏期間は6~14日間程度で、主な症状は発熱と消化器症状(おう吐、下痢など)が中心で、倦怠感、リンパ節のはれ、出血症状なども見られます。致死率は年度により差がありますが6.3%~30%と高い傾向にあります。日本での発症件数は年々増加傾向にあり、2013年には40例(そのうち14人が死亡)だった事例が2019年には102例(そのうち5人が死亡)まで増加しました。
 また最近の研究では、SFTSウイルスに感染し、発症している野生動物やネコ・イヌなどの動物の血液からSFTSウイルスが検出されてることがわかりました。それはつまり、SFTSウイルス感染している動物の血液などの体液に直接触れた場合、感染することも否定できないということです。尚SFTSウイルスは猫に対する病原性が高く、不用意に野良猫に触らないようにすることや、ご自身のペットのダニ対策の徹底、そして完全室内飼育を徹底することが、ペットやご自身を守るための要になりそうですね(; ・`д・´)
 この感染症は発症した場合治療法はなく、特異的な薬物療法は存在しないみたいです。また予防を目的としたワクチンも開発されていないようです。

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ノゾミ

茨城県の新米猟師。本業はヨガのインストラクター。東京に10年以上住んだ後、一念発起して茨城へ移住。ヨガレッスンの傍ら、おばあちゃんの畑のお手伝いをしている。畑に出る猪を駆除するために“狩猟免許”を取り仲間と共に害獣駆除を開始。近年の猟師・農家の高齢化・減少の現実受けて少しでも若い人に、そしてたくさんの人に“農業”について、“狩猟”について、そして“いのち”について興味を持って持ってもらいたいという想いから2019年1月よりYouTubeにて“Nozomi's狩チャンネル”を配信。2020年にはワーキングウエア(作業服)・防寒着・安全靴・長靴、レインスーツの専門店チェーン<ワークマン>公式アンバサダーにも就任。



♦Nozomi's狩チャンネル

https://www.youtube.com/c/nozomikarichan



♦ランドネたのしみ隊第一期生


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