国家の軽視と新型コロナの軽視は同根!【中野剛志×佐藤健志×適菜収:第4回】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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国家の軽視と新型コロナの軽視は同根!【中野剛志×佐藤健志×適菜収:第4回】

「専門家会議」の功績を貶めた学者・言論人

■パンデミックなら生活が不自由になるのは当り前

中野:知識人の中には、緊急事態宣言や外出自粛など全体主義的でおかしいとか、日常生活が犠牲になったなどと批判する人が数多くいます。極めつけは、藤井氏が「僕は、自粛させられていることで、山ほど嫌な思いをしています」と宣言した文章( https://the-criterion.jp/mail-magazine/m20200706/ )ですね。
 そりゃ、不自由ですよ。日常も破壊された。しかし、パンデミックって、戦時中みたいな非常時だと考えれば、不自由なのは仕方ない。あとは、まさに戦時中のように国債を大量発行して、財政政策で国民の経済的苦痛を和らげるしかないのです。空襲が来るから防空壕に入れって言われて、防空壕の中では社交ができないとか、日常生活に戻りたいとか、プロレスが見たいとか、釣りがしたいとか騒いでどうするんだ。

佐藤:防空壕の中で踊ったっていいじゃないか。フレンチ・ポップスの大物セルジュ・ゲンスブールが、「ロック・アラウンド・ザ・バンカー」という曲で歌っています。1945年、ベルリン陥落を目前にしたヒトラーが、地下司令部(バンカー)で踊りまくるというもの。いわく、「素敵なダンスパーティだ。時の流れに、崩壊の時。背徳の世界が傷ついてるぜ」(ジル・ヴェルラン『ゲンスブールまたは出口なしの愛』、永瀧達治・鳥取絹子訳、マガジンハウス、1993年)。

中野:過疎の村であろうと、人命を守るために、防災のための財政政策をやるべしと孤軍奮闘で戦ってきたのが藤井聡という人だと、私は思っていたのです。ところが、そんな彼が、新型コロナについては、突然、「安倍政権は、財政政策をやるとは思えない。いくら自粛+財政政策を叫んでも成功する見込みはほとんどない。それより、コロナのリスクに対処しながら、経済を回せ」と言い出した(https://the-criterion.jp/mail-magazine/m20200706/)。これには驚いたし、何より残念だった。つまり、専門家会議が求める自粛を批判するために、持論の財政政策を放り出してしまったのです。財務省は喜んだと思うけれど。ならば、防災についても、「いくら防災+財政政策を叫んでも成功する見込みはない。それより、災害のリスクに対処しながら、経済を回せ」と言えばいいじゃないか。

佐藤:爽快とはそういうものです。

適菜:熊本の川の氾濫とダムの話と、一連の新型コロナについて語ってることも矛盾していた。

佐藤:後者は魂の叫びですから。「矛盾だ」「矛盾だ」と鬼の首を取ったようにあげつらうのも考えもので、理屈にならない魂の叫びは誰の中にもある。それ自体は、べつにどうこう言うことではない。
 まずいのは論理的な主張と、魂の叫びの区別がつかなくなること。すると何が論理で、何が感情なのか区別できなくなる。

適菜:私は、振り上げた拳を下ろせなくなってしまって、都合のいいデータを集めて自己正当化してるだけに見えたんですけど。それだけでは説明できないですね。

中野:藤井氏があそこまで執拗に西浦先生に粘着し攻撃する理由は、何なのでしょうね。ちょっと異様なものを感じる。

佐藤:まっとうな言動をしてさえいれば、動機はどうでもよろしい。人間の心情など、どのみち本当のところは分かりません。
 論理と感情の区別がつかないのはダメ、それだけのことにすぎないんですよ。すると自分の感情を正当化するために、論理がひたすら動員される。ところが感情は理屈ではないので、理屈ではないものを理屈で正当化するという不可能への挑戦が始まってしまう。結果的に、ある事柄についてはまともな発言をしているのに、別の事柄にはついては矛盾だらけになるのです。

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「新型コロナは風邪」「外出自粛や行動制限は無意味だ」

「新型コロナは夏には収束する」などと

無責任な言論を垂れ流し続ける似非知識人よ!

感染拡大を恐れて警鐘を鳴らす本物の専門家たちを罵倒し、

不安な国民を惑わした言論人を「実名」で糾弾する!

 

 

危機の時にデマゴーグたちに煽動されないよう、

ウイルスに抗する免疫力をもつように、

確かな思想と強い精神力をもつ必要があるのです。

思想の免疫力を高めるためのワクチンとは、

具体的には、良質の思想に馴染んでおくこと、

それに尽きます。——————中野剛志

 

 

専門的な医学知識もないのに、

「コロナ脳」「自粛厨」などと

不安な国民をバカにしてるのは誰なのか?

新型コロナに関してデマ・楽観論を

流してきた「悪質な言論人」の

責任を追及する!———————適菜収

 

 

『思想の免疫力』目次

 

はじめに———デマゴーグに対する免疫力 中野剛志  

 

第一章 

人間は未知の事態に

いかに対峙すべきか

言葉の限界について

なぜ丸山眞男を批判するのか

小林が指摘した近代的思考の暴力

封建社会と市民社会

文学の裏には政治がある

人間は政治的動物である

政治家は「顔」で判断しろ

顔と同じで文体も誤魔化せない

 

第二章 

成功体験のある人間ほど

失敗するのはなぜか

「型」や「文体」の重要性  

制約のあるところに「自由」がある  

「意は似せ易く、姿は似せ難し」  

イチローと宮本武蔵  

二宮尊徳の「書物の読み方」  

イデオロギーはものの本質を見えなくする  

僕は馬鹿だから反省なんぞしない  

人間は同じパターンで間違いを繰り返す  

新型コロナの最も怖い症状  

 

第三章 

新型コロナで正体がバレた

似非知識人

福沢が説いた「私立と自由」  

「瘠我慢の説」とはなにか  

京都大学大学院教授  

人を説得することは可能なのか  

「言葉の恐ろしさ」と自己欺瞞  

「知識人ごっこ」の危うさ  

 

第四章 

思想と哲学の背後に流れる水脈

マイケル・ポランニーの「暗黙知」  

「知っている」とはどういうことか?   

「信じることと知ること」  

「暗黙知」とは体得するもの  

「馴染む」という知のあり方  

 

第五章 

コロナ禍は

「歴史を学ぶ」チャンスである

小林が語った秀吉の「朝鮮出兵」  

歴史とは鏡である  

学問は一代限りのもの  

学問や思想が腐りやすい理由  

教育者としての資質  

 

第六章 人間の陥りやすい罠

「筆を折る」と宣言した大学院教授  

現代貨幣理論)と藤井聡  

オウム真理教と知識人の悪ふざけ  

日本をダメにした「朝生」言論人  

時よ止まれ、おまえは美しい  

現代の俗物図鑑  

 

第七章 「保守」はいつから堕落したのか

議論とディベートを同一視する危険  

ディベートからの悪い影響  

日本が狂い始めた転換点  

「根回し」は合意形成の必須要件  

新自由主義という堕落  

世代交代に期待できるか  

「保守」が劣化した理由  

「大衆」とはなにか  

 

 

第八章 

人間はなぜ自発的に

縛られようとするのか

なぜグルを求めるのか  

アルコールと理性の限界  

「科学」に対する誤解  

イスラムでアルコールが禁止されている理由  

文壇バーと過剰な自意識  

 

 

第九章 人間の本質は「ものまね」である

コロッケが偉大な理由  

ミラクルひかると坂本冬休み  

「ものまね芸」を無形文化遺産に  

なぜ人は笑うのか  

型破りと芸の本質  

記憶も無意識のものまね  

ピカソや伊藤若冲に見えていたもの  

芸術は主観と客観を一致させる  

偉大な芸術家や学者の顔が若いのはなぜ?   

本質を見抜くトクヴィルの目  

 

おわりに———なにかを予知するということ 適菜   

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