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【非常事態宣言下の感染管理】求めるべきは安心ではなく、安全《岩田健太郎教授・感染症から命を守る講義㊺》

命を守る講義㊺「新型コロナウイルスの真実」

◼︎求めるべきは安全

 本来は「安全」を目指して、しっかり治療して病気を治すことが大切です。治療には時間がかかるかもしれな いけれど、病気が治れば痛みもなくなる。

 しかし「安心」という間違った概念を求めると、つまり現実に存在するリスクをほったらかしにして気分だけ良くしようとすると、病気はどんどん進行していきます。もちろん、実際の臨床現場では鎮痛そのものにも大きな意味はあります。が、それが「もとの病気を看過し、無視するため」に行われるのは困ります。そもそも、人間には痛覚があるからこそ怪我や病気の危険を素早く察知できるのですから。

 だから、安心を求めてはいけない。「安心なんて幻想だ」ということをしっかり理解することが大切になります。

 求めるべきは、安全だけです。「こうやったら感染は防げる」「こうやったら防げない」という線引きをちゃ んとして、その通りに行動する。やるべきことはそれだけなんですよ。

 不安に思うべきところは、不安なままでいいんです。不安にならなきゃいけないシチュエーションで麻薬を打って安心したら、より危険になるんです。

 東日本大震災以前、多くの人が「原発は安全だ」と思っていましたよね。恥ずかしながらぼくもその一人でした。でも、その「安全」は、客観的なデータを見て「なるほど、これなら安全だ」と評価していたわけじゃかっ たですよね。テレビCMか何かで有名人が「原発はクリーンなエネルギーです」と言うのを聞いて、雰囲気だけで気分がよくなって、根拠もなく「安心」していただけです。事実を見ていなかったし、その結果、あの事故を防げなかった。「安心」って、危ないんですよ。

「新型コロナウイルスの真実㊻へつづく)

 

 

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岩田 健太郎

いわた けんたろう

1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学都市安全研究センター教授。NYで炭疽菌テロ、北京でSARS流行時の臨床を経験。日本では亀田総合病院(千葉県)で、感染症内科部長、同総合診療・感染症科部長を歴任。著書に『予防接種は「効く」のか?』『1秒もムダに生きない』(ともに光文社新書)、『「患者様」が医療を壊す』(新潮選書)、『主体性は数えられるか』(筑摩選書)など多数。


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