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【第3波と向き合う】新型コロナウイルスと中国の経済大国化【岩田健太郎教授・感染症から命を守る講義㊲】

命を守る講義㊲「新型コロナウイルスの真実」


 なぜ、日本の組織では、正しい判断は難しいのか。
 なぜ、専門家にとって課題との戦いに勝たねばならないのか。
 この問いを身をもって示してたのが、本年2月、ダイヤモンド・プリンセスに乗船し、現場の組織的問題を感染症専門医の立場から分析した岩田健太郎神戸大学教授である。氏の著作『新型コロナウイルスの真実』から、命を守るために組織は何をやるべきかについて批判的に議論していただくこととなった。リアルタイムで繰り広げられた日本の組織論的《失敗の本質》はどこに散見されたのか。敗戦から75年経った現在まで連なる教訓となるべきお話しである。


■中国のインパクト

 新型コロナウイルスは、中国国内で何らかの動物から人間に感染したところから拡がったといわれています。

 感染のもとになった動物については、コウモリ説や爬虫類説などいろんな説が流れていますけど、今のところ分かっていません。

 「足があるものは机以外、羽のあるものは飛行機以外」といわれるほど、中国にはいろんなものを食べる文化がありますよね。それもあって、中国社会ではいろんな動物と接触する機会が多い、ということは昔からいわれています。

 それに加えて、現代における中国の経済大国化によって、感染症についても中国からのインパクトはより大きくなったと考えられます。端的に言うと、中国人がリッチになったので、中国から他の国に行く人がすごく増えたわけですよ。ヨーロッパ、アメリカ、日本、アフリカと、どこにでも中国から来た人がいますよね。

 この非常に活発な活動が、中国国内の感染症をグローバルな感染症にしてしまうわけです。以前の貧しい中国であれば、外への移動も少ないから感染はこんなに拡がらなかったはずです。けれども現在の中国は、世界で一、二位を争う経済大国になりました。だからどの国でも中国との交易は盛んですし、リッチになった中国人が外国に頻繁に旅行するようになった。

 「中国からの渡航を禁止すればよかったじゃないか」という話がよくありますが、おそらくそれは五十歩百歩の問題で、感染の拡がりを止めるインパクトは最終的にはあんまりなかったと思います。

 中国からの渡航をさっさと禁止したアメリカ【注】でも、コロナウイルスはすごく流行しています(【注】2020年11月17現在、アメリカでの感染死者数24万7202人「NHK特設サイト『新型コロナウイルス』より引用」 https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/world-data/)。

 渡航禁止をしたら一時しのぎにはなるかもしれないけれど、他の国を介して、結局人は入ってくるんです。

 このウイルス感染を完全に免れた国、あるいは免れそうな国というのは今のところ存在しない。

 春節のときに中国人を入れなきゃよかった、みたいな話は、おそらくは程度問題で、問題が深刻化する時期が後ろにずれるだけだったと思います。

「新型コロナウイルスの真実㊳へつづく)

 

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岩田 健太郎

いわた けんたろう

1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学都市安全研究センター教授。NYで炭疽菌テロ、北京でSARS流行時の臨床を経験。日本では亀田総合病院(千葉県)で、感染症内科部長、同総合診療・感染症科部長を歴任。著書に『予防接種は「効く」のか?』『1秒もムダに生きない』(ともに光文社新書)、『「患者様」が医療を壊す』(新潮選書)、『主体性は数えられるか』(筑摩選書)など多数。


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