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かつての自民党の「派閥政治」は日本の家族類型にピタリとはまっていた

Q7:官邸主導で人事権を振りかざし、逆バネが働いて森友・加計学園問題など様々な問題が噴出しています。この官邸に権力が集中しているのは直系家族の特徴ですか。

なぜそれが今の状態になってしまったか

 そういった直系家族的性格が色濃かった頃はうまく回っていたと思います。それがなぜ今のような状況になってしまったかと言えば、小選挙区制が導入されたからです。

『アメリカのデモクラシー』を著したアレクシ・ド・トクヴィルが1830年代のアメリカを観察していて、「下院議員は驚くほどバカばかりだが、上院議員は逆に素晴らしい人間ばかりだ」と評しています。

 この差がどこから生じるのかといえば、上院は当時間接選挙だったんですね。選挙人を選び、その選挙人がまた選ぶ。かつての自民党の派閥政治はまさにそのやり方だった。選ばれた議員が派閥の中で派閥の代表を選ぶから、最終的にはまともな人間が残って派閥をリードして、ダメなヤツは挙手要員としての陣笠議員になる。小選挙区制度を導入してそれを壊したのが小沢一郎氏ですね。トップに誰が立つかだけで、選挙区に誰が立とうがその時々の人気に左右されてシロクロがつくだけ。

 だから首相、官邸に権力を集中して党からは力が削がれた格好になっている。小選挙区は完全に官邸主導と連動しています。小選挙区制ではトクヴィルが言うところの、「バカばっかり生まれ出てくる」のも必然だと思う。

 私が日本国憲法を変えるとしたら、二院制を変える。衆議院議員の互選によって参議院議員を選び、全ての権力を参議院に与える。これがベストな方法だと思いますよ。

 

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鹿島 茂

かしま しげる

鹿島 茂(かしま•しげる)



1949年生。仏文学者。明治大学教授。専門は19世紀フランス文学。『職業別パリ風俗』で読売文学賞評論・伝記賞を受賞するなど数多くの受賞歴がある。膨大な古書コレクションを有し、東京都港区に書斎スタジオ「NOEMAimagesSTUDIO」を開設。新刊に『神田神保町書肆街考』(筑摩書房)、『太陽王ルイ14世ヴェルサイユの発明者』(KADOKAWA)がある。Twitter アカウント:@_kashimashigeru


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