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業界売上6兆円割れに。百貨店不況の一番の原因は何なのか?

【百貨店不況】を「日経ビジネス」記者・杉原淳一氏が徹底解説1/3

●ネット通販、メルカリ。何より消費者の“眼”が変わってきた

杉原…ええ、この2つはリンクしています。ここでもう少しアパレルの問題に踏み込んでみましょう。お二人は洋服をどこで買っていますか?

シズカ…昔はファッションビルで買っていたけど、最近はもっぱらネット通販。「ZOZO TOWN」でついつい買いすぎちゃうんです。

トオル…僕はユニクロが多いかな。ファストファッションにもよく行きます。

田中光さんのシュールイラストでも分かる?

杉原…以前は「洋服を買いに行くならまず百貨店」という人も多かったのですが、今はそうではなくなっていますよね。服を買うなら、その選択肢は「ファッションビルやショッピングセンター・単体のショップ・ユニクロやファストファッション・ネット通販・百貨店」というようになっています。

シズカ…あっ、さらに最近は「メルカリ」で洋服を探すようにもなったわ。手軽に買えていいのよね。なんといっても安いし。

杉原…特に若い世代にとって洋服を買う場所の選択肢は非常に広がっています。ネット通販もあるしユニクロやファストファッションもある。「洋服を買うなら百貨店」という考え方は姿を消してしまって、いろんな選択肢がフラット化しました。消費行動が大きく変わり、少なくとも選択肢の第1位が百貨店になっている世代ではないことは確かでしょう。

トオル…やっぱりネット通販やユニクロのような存在は大きいんだね。

杉原…消費行動といえば、お客さんの“見る眼”も変化してきたと感じます。その大きなきっかけがユニクロの登場です。低価格ながら原価率が高いユニクロをきっかけにして、お客さんは「この服の本当の価値はいくらなんだろうか」という意識を持つようになったと思います。

トオル…僕はユニクロをよく使うからわかるけど、「このジャケットがこんな安くていいの?」とかビックリすることが多いんだよね。しかも、かなり丈夫で物によっては何年も使い続けることができるし。

シズカ安いからこそ、よくその材質を見るようになったり、原価を考えたり、買うことに対して意識が高まってきたのかな。

杉原…そういうことです。例えば、百貨店で売っている1万円の服があったとして、いろいろなコストを引いた結果原価が2000円くらいだったとします。一方で、ユニクロに行けば定価5000円で原価は2000円の服もある。

シズカ…それならユニクロを選んじゃうな。「百貨店だから」という理由で高いお金を払う余裕もないし、それならいろんな種類の洋服を着たいし。

杉原…加えて、百貨店の限られたスペースの売り場には欲しいと思う洋服が置いていなかったというケースもありますよね。一方で、ネット通販を使えば数えきれない程のラインナップから選べる。ネット通販など新たな業態が急成長したことも相まって、百貨店では主に婦人服の売り上げがどんどん落ちていっています。婦人服はアパレル部門のなかで大きなシェアを占めています、そして繰り返しますが、アパレルは百貨店の売上のなかで大きなシェアを占めています。つまり、百貨店におけるコア商材が売れなくなってきているのです。

シズカ…売上額はずっと落ち続けていると教えてもらったけど、何か手は打たなかったのかしら?

トオル…シズカちゃん突っ込むね! でも、確かに「売れなくなってきているモノ」自体はハッキリしているだけに、そう思ってしまう所はあるなあ。

(第2回に続く)

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