西那須野から大田原へ・東野鉄道【前編】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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西那須野から大田原へ・東野鉄道【前編】

ぶらり大人の廃線旅 第19回

「人車鉄道」の走った大田原街道踏切

 橋上駅である西那須野駅を降りて東口へ向かった。首都圏の駅と同様にスイカの使える自動改札機がある。かつて東野鉄道が発着していたのはこちら側だが、昭和43年(1968)の廃止からほぼ半世紀経っているので、さすがに目立った痕跡はない。

 少しの間は東北本線の東側を並走し、大田原街道の踏切を過ぎた後で徐々に右カーブしていくのだが、大田原までの線路跡はずいぶん以前から遊歩道になっている。

東北本線の西那須野駅。東野鉄道はここを起点としていた。今は立派な橋上駅となっている。

  西那須野駅を過ぎてすぐ渡っていたのが第二大田原街道踏切で、並走する東北本線の方はもちろん現役の踏切だ。東野鉄道が大正7年(1918)に開通する以前は、この付近を起点に、街道上を大田原まで那須軌道の線路が敷かれていた。

第二大田原街道踏切。この手前側から大田原まで人車、後に馬車鉄道が走っていた。上に見える高架は東北新幹線。

  軌間(2本のレールの内法)は762ミリで、当初はミニサイズの客車を人が押すものだったが、大正7年(1918)から馬車鉄道に変更されている。「大正2年(1913)部分修正」の地形図を見ると、この軌道の南側ほど近い所に「大山邸」と記されているが、これは明治の元勲として知られる大山巌の別邸で、その墓所はすぐ近くだ。近所には乃木希典(まれすけ)も別邸を構えていて、近くには夫妻を祀った乃木神社が大正5年(1916)に創建されている。

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今尾 恵介

いまお けいすけ

1959年横浜市生まれ。中学生の頃から国土地理院発行の地形図や時刻表を眺めるのが趣味だった。音楽出版社勤務を経て、1991年にフリーランサーとして独立。旅行ガイドブック等へのイラストマップ作成、地図・旅行関係の雑誌への連載をスタート。以後、地図・鉄道関係の単行本の執筆を精力的に手がける。 膨大な地図資料をもとに、地域の来し方や行く末を読み解き、環境、政治、地方都市のあり方までを考える。(一財)日本地図センター客員研究員、(一財)地図情報センター評議員、日本地図学会「地図と地名」専門部会主査、日野市町名地番整理審議会委員。主著に『日本鉄道旅行地図帳』『日本鉄道旅行歴史地図帳』(いずれも監修/新潮社)『新・鉄道廃線跡を歩く1~5』(編著/JTB)『地形図でたどる鉄道史(東日本編・西日本編)』(JTB)『地図と鉄道省文書で読む私鉄の歩み1~3』『地図で読む昭和の日本』『地図で読む戦争の時代』 『地図で読む世界と日本』(すべて白水社)『地図入門』(講談社選書メチエ)『日本の地名遺産』(講談社+α新書)『鉄道でゆく凸凹地形の旅』(朝日新書)『日本地図のたのしみ』『地図の遊び方』(すべてちくま文庫)『路面電車』(ちくま新書)『地図マニア 空想の旅』(集英社)など多数。


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