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常勝軍団・聖光学院は「初戦」にどんな価値をおくのか

ライター田口元義が聖光学院11連覇への道を追う

■福島で意識するチームとは?

 普段ならすぐに口を開く斎藤監督も、少し思考を巡らせ、質問に答えた。

「聖光しかない。うちのことで頭がいっぱいだよ(苦笑)。監督、コーチは毎年夏があるけど、生徒たちは3回……3年生は集大成の夏は1回しかない。だから、『何とかして、こいつらを絶対甲子園に連れて行ってやりたい!』って思えるんだよね」

 誤解なく補足すれば、斎藤監督が言う「聖光しかない」という回答は、「福島のすべてのチームを意識する」ことである。
 まずは、自分たちのチームを成熟させなければ、戦いの舞台に上がる資格はない。斎藤監督はそう言いたいのだ。

 それを象徴していたのが、2015年だった。
 春の県大会を制した時点で、「よすぎるくらい」にチーム状態は上々だった。ところが、その直後に行われた地区のみのトーナメントである準公式戦で敗れた。
 試合後のロッカーで怒号が飛ぶ。

「こんなユニフォーム着てられるか!」

 斎藤監督は聖光学院のユニフォームを脱ぎ捨てるように、地面に叩きつけた。「お前ら、なんでユニフォームを着てんだよ!!」。その怒りは、なかなか収まらなかったという。

「あの時は、選手に慢心があった。心も体も夏に向かうにはベストの状態じゃなかったから相手を甘く見てほしくなかった。でも、あいつらは『負けるはずがない。勝てる』と思いながら試合をしていた。そんなバカ集団に本当に腹が立ったね、あの時は」

 グラウンドに戻ると、11キロのマラソンコースを走らせるなかで、選手たちに負けたこと以上に自分たちの未熟さを考えさせた。「一度、どん底まで落とす必要があった」と斎藤監督は言った。ミーティングや合宿を経て、ようやく夏のスタートラインに立ったものの、当時は「まだ夏が始まった実感がわかない」と苦笑していたものである。

 毎年、チーム育成のアプローチは違う。だが、10連覇の過程で安寧を得た年など、一度もないのだ。

 今年もまた、夏が始まる。

 春に斎藤監督が言っていたように、「まだ試合での苦しみが足りない」のかもしれない。だとすれば、初戦はその試金石になるはずだ。

 多くの人間が「初戦なんて楽勝でしょ」と、楽観視しているに違いない。大方の予想通り、きっと、聖光学院は勝つ。だが、その勝ち方、試合での選手の意識が、その後の戦いを大きく左右するのである。

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田口 元義

たぐち げんき

1977年福島県生まれ。元高校球児(3年間補欠)。ライフスタイル誌の編集を経て2003年にフリーとなる。Numberほか雑誌を中心に活動。試合やインタビューを通じてアスリートの魂(ソウル)を感じられる瞬間がたまらない。現在は福島県・聖光学院野球部に注目、取材を続ける。


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