8月15日は戦争記念日【写真で見る戦死と敗戦75年のいま】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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8月15日は戦争記念日【写真で見る戦死と敗戦75年のいま】


 終戦75年。えっ⁉️ 無条件降伏だったんじゃないの? なら敗戦でしょう。負けたんだよね。ええ負けました。310万人を超える方がお亡くなりになりました。悠久の大義のもとに。でも、それは戦死者を出した家族・近親者にとって「自分ごと」と引き受けた時に「意味」ある死として受け止められるだろうか? それは無理だろう。しかし、この不条理な記憶が今や着実に国民的忘却にさらされる75年目の今日、戦争と向き合う記念日にしてみるのはいかがだろうか? 平和であるための「戦争」の記憶として。 


◼︎平民だから8月くらいは戦争を考えてみよう

1945年9月2日、ポツダム宣言を受諾した日本政府は東京湾上の戦艦ミズーリ号の甲板上において降伏文書に調印した。(写真:パブリックドメイン)

 平民にとって、夏休みは年一度の大切なイベントだ。“盆暮れ正月”のトップバッターは正月ではなく、お盆休みだ。割高だろうが、渋滞しようが、決まった日程に一斉に休む。宮仕えも小規模店主も同じだ。コロナで休業中、失職中も増加一途のご時世なれば、仕事があるだけで、ありがたい。世の中にはロクに休めない人々も多いので、有給の夏休みがあれば平民の中でも上層だ。今年は旅行にも行けない。田舎にも帰れない。海外旅行などもってのほかで、一家でスーツケースを運び出していたら、ご近所から白眼視される。それが深夜なら夜逃げだ。

 政府はああしろ、知事はこうしろと、あべこべのこと言う。妙に丁寧な言葉遣いで、真上から言ってくるのが日本式だ。推奨と言いながら間接的に強制している。日本人である以上、村八分覚悟でアイドンケアとは言えない。上つかたから、下々にいたるまで、中央から田舎まで、忖度の連鎖で成り立っているから仕方がない。オリンピックも甲子園も無い、「まるで戦時体制」だ。大臣と知事たちがテレビの露出度を競い合う。奇妙で退屈で、熱さのせいもあって、ときとして眩暈、吐き気すらする夏だ。ニュースを見ても、感染者数以外、何もわからない。だからせめて、八月くらいは、平民だって戦争について考えてみたい。

 墓参りをしながら、未曾有の負け戦を振り返ることが国民的お約束だ。戦争を知る日本人はいよいよいなくなっている。NHKが番組を連発しても、素晴らしいアニメが作られても、戦争の記憶は年年歳歳ぼんやりとして、記号になっていく。平民は広島長崎の慰霊式典をニュースでチラ見して、世界平和を祈ることにはなっているが、首相のスピーチがコピペでは、オワっている。若い参拝者が増えている靖國は君子危うきにでメディアはスルーだ。
 世界にはこの世を何回も終わらせて余りある数の核弾頭があり、けっこうな数が日本に向けられているが、その危機感は無い。ミサイルをこっちにむかって撃つ練習をしているやつらもいるが、日本海に落ちる飛翔体では、恐ろしさを感じない。核使用実績と世界最大核弾頭数を誇るアメリカの核の傘で守られているから安心だ。そもそも、国は核兵器に反対していない。さすがに誰も使うまいと信じ込んで、ここまできた。

1945年8月6日広島(左)、8月9日長崎。二つのキノコ雲(写真:パブリック・ドメイン)

 次の巨大地震はいつか。こちらは日本人にとって、翌月の天気の話をするようなものだ。東海、東南海、南海、首都直下型、富士山噴火、どれがきてもおかしくないと話す。巨大地震と大規模噴火の大連発は平安時代に起きている。1100年以上前なので、ちょっと遠い。映像もない。地震予知が進んでいるとは思えない。いまだに地震は予知できない。仮にできても知らされない。恐ろし気なサイレンが間違って鳴っても誰も怒らない。だから何を言っても許される。地震は人を差別しないから、平民も口にしてよい。シミュレーション映像だって何度も見た。いまこの瞬間、来るかもしれないと思って刹那を生きればよい。来るときは来る。死ぬときはみんな死ぬ。そう思っていたら、コロナが来た。

1923年9月1日に起きた関東大震災。 京橋の第一相互ビルヂング屋上より見た日本橋および神田方面の惨状。死者・行方不明者10万5000人以上(写真:パブリック・ドメイン)

 コロナはコロナで厄介だ。来ているのか来ていないのか、そもそも何なのか、よくわからない。世界で75万人の死者が出ても、自分の職場や近所でバタバタ死んでるわけではない。マスクをして、手を消毒して、距離を置いて、少し宴会を慎む。コロナがこわいからではない。人目が面倒だからだ。クラスタでも出せば、お代官様に名指しされ、店も会社も学校も袋叩きに遭う。一番怖いのは名指しで晒し者にされる社会的制裁だ。非国民扱いだ。コロナより、それが怖い。

戦時ポスター(写真:パブリック・ドメイン)

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猫島 カツヲ

ねこじま かつを

ストリート系社会評論家。ハーバード大学大学院卒業。

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