8月15日は戦争記念日【写真で見る戦死と敗戦75年のいま】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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8月15日は戦争記念日【写真で見る戦死と敗戦75年のいま】

◼︎もはや民主主義と全体主義にたいした差はない

1945年9月27日、昭和天皇とマッカーサーとの会見。以降、「天皇陛下バンザイ!」から「拝啓 マ元帥!」と変わり身の早い日本国民の姿も散見された。(写真:パブリック・ドメイン)

 緊急事態宣言中、何を言っているのかわからない奇妙なアナウンスが遠くから聞こえた。コロナが何かをシミュレーションしている。大臣と知事があべこべのことを言っても、結局落としどころとしての空気が支配する。
 すべて平民の自己判断に任され、自粛と自己規制で、結果に対して自己責任となる。不便を強いられても、おとなしく従う。皆が皆規制をされた社会では、皆が皆余裕を失う。やり場のない不安と怒りの矛先を向けるターゲットを探しては叩く。内にあっては弱者が弱者を抑圧し、被害者が被害者を生み出す。そしてあふれたエネルギーは外に向かう。

 余裕の無い平民は塊りやすく、流されやすい。それはよその国も同じことだ。隷属と破滅への道を嬉々として舗装してしまう。政治がその上を走る。その時、民主主義と全体主義にたいした差はなくなっている。

 戦時体制においては、ペットも飼えなくなる。動物園は閉鎖され、動物たちは処分される。声を出せない者たちは人間だって処分される。あれこれと細かい禁止事項が通達され、それを嬉々として喧伝する輩も跋扈する。メディアは宣伝機関となり、同じことしか伝えない。

 すべてのエンタメは管理される。ゲームもアニメもドラマもバラエティーも検閲を受ける。ネットの発言は常時監視される。スポーツ大会や紅白歌合戦は自衛隊を応援する国民的イベントとなるだろう。そこにはいまと同じメンツが出ている。日本が一つにまとまる感を出す。がんばれ日本を演出するのは新聞、テレビ局、芸能界だ。人気YouTuberも乗っかることは言うまでもない。死にかけたラジオすら、活躍の場を得るだろう。

 外は猛暑だし、出かけるわけにもいかないから、家族で任天堂スイッチ、子供はYouTube、オトナはネトフリで韓流ドラマだ。缶詰めレシピを試しながら、アルコール9%のチューハイを家飲みして、ZOOMで墓参りだ。商店街では多くの飲食店が店を閉じ、一番混んでいるのはマクドナルドとKFCだ。政府が巨費を投じてワクチンを買うと約束したのは、欧州のアストラゼネカとアメリカのファイザーだ。人口分をおさえたのは結構なことだが、これが実際に役立つかどうかは、まだわからない。カネで解決できるのも今のうちだ。

 モーリシャスでは日本の船が座礁して、サンゴ礁に重油をぶちまけている。本当なら新婚旅行か夏休みに行く予定だったかもしれない。憐れな小国は緊急事態宣言を出しているが、日本では遠いニュースだ。平民の興味の範囲外だ。

◼︎今度の戦争のために備えるべきこと

ガダルカナルの戦闘。壊滅した陽動部隊の住吉支隊(1942年10月24日、マタニカウ川河口/パブリック・ドメイン)

 今度戦争が起きる時は、どこでどのように始まり、どのような姿を見せるのか。それは日本人がぼんやりと記憶する、先の戦争のような顔をしているのか。それともまったく違う顔かたちをしているのか。そもそも敵は誰なのか。中国なのか、北朝鮮なのか、ロシアなのか、それともまさか…エイリアンなのか。音を立ててやってくるのか、静かに始まるのか。遠くでやるのか、まさかこの近所で起きるのか。アメリカは助けてくれるのか。自衛隊の実力はどの程度なのか。中国の海軍力は海上自衛隊をはるかにしのいでいるらしい。戦争には莫大なカネがかかるが、日本は世界で断トツの借金財政国だ。大丈夫なのか。

 お上はまったくアテにならないし、コロナで不安が日常化しているかもしれないが、何もかも悲観的になってはいけない。何が起きようと、最後に平民を守る思想は個人の楽観主義だ。だからといって、3発目の核爆弾が頭上で炸裂しない保証はないということを、肝に銘じておくのがよかろう。その時、焼き場に立つ少年となるのは、数も少なくなった幼い子供たちだということも覚えておこう。

 次の記念日は9月1日、関東大震災。世間の話題は戦争から地震に切り替わる。戦争記念日の今日から、まだ半分残っている八月いっぱいは、妄想でもいい。ヒマを持て余しているなら、次の戦争について考えをめぐらせておこう。

 戦争の暴虐と殺りくに晒され、奪われ、焼き尽くされ、無意味な死を遂げるのは平民と決まっている。戦争に理由はいらない。戦争それ自体が戦争を求め、戦争に至るからだ。軍事技術だけではなく、戦争のありかたも進化している。戦争をしなくても、戦争ができるようになってきた。だから、何が起きているかわからないうちに敗戦する、恐るべき時代にいる。

 平民が再び、「日本」に殺りくされてしまわないように。   
  「日本人」が、人垣となり兵糧となって数値化されて消費されないように。
  「国家」のために、犬死にしないように。

 鎮魂や祈りの儀式を繰り返してもだめだ。無知と無関心の最終的な代償は、理由もわからずに死んでいくことだからだ。

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猫島 カツヲ

ねこじま かつを

ストリート系社会評論家。ハーバード大学大学院卒業。

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