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ジャイアントキリングが起きる要因。格上チームに存在する心理

天皇杯で起きた下剋上を読む

戦いにおける心の置きどころ

 では、なぜジャイアントキリングは起きるのでしょうか。どんなときにジャイアントキリングを起こさせてしまうのでしょうか。
 格下と対戦するときに格上のチームが陥りがちな心境について考えてみると、その理由のひとつがわかるのではないでしょうか。

 サッカー選手はみんな「超」がつくほどの負けず嫌いです。天皇杯の日程面には改善の余地があると思いますが、それでも選手たちのモチベーションに影響はありません。サッカー選手として試合に一生懸命になれないはずがないのです。

 問題となるのはモチベーションではなく、戦い方への心の置きどころだと思います。
 簡単に言うと、攻撃面では「慎重になること」、守備面では「雑になること」です。

 格下のチームとの対戦となると、プロ選手(格上の選手)にはいつも以上に、ミスをすることを嫌う心理が働きます。ミスはいつも怖いですが、格下との試合では怖いという心理よりも、「ミスが恥ずかしい」という心理が少しだけプラスされます。
 「格下の相手」、と監督も選手もサポーターも観客も知っている中では、無意識レベルでですが、その相手にボールを取られることや出し抜かれてしまうことをいつも以上に嫌がってしまうのです。

 攻撃を始めると、ボールを簡単に取られる姿を晒したくない選手たちは”安パイ”な選択をしがちになります。
 ボールを保持していても勝負のパスや仕掛けを躊躇してしまい、結果、ボールを相手のブロックの外で回しているだけになります。そうすると、モチベーション充分で挑んできている格下のチームは”粘る”ことがたやすい状況となり、時間の経過とともに格上のチームのリズムに慣れていき、そして「やれそうだ」と自信を掴んでいきます。

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岩政 大樹

いわまさ だいき

東京ユナイテッドFC

サッカー選手

1982年1月30日生まれ、35歳。187cm/85kg。ポジションはセンターバック。

山口県出身。周東FC、大島JSCを経て岩国高校サッカー部でプレー。東京学芸大学在学中に注目を集め、2004年鹿島アントラーズに加入。

2007年~2009年鹿島アントラーズのJリーグ3連覇に貢献。自身も3年連続Jリーグベストイレブンに選出される。

2013年鹿島アントラーズを退団。2014年にはタイプレミアリーグのテロサーサナでプレー、翌年ファジアーノ岡山に加入。

強さとクレバーさを兼ね備えたプレーでディフェンスラインのリーダーとして活躍する。2017年シーズンより関東サッカーリーグ1部の東京ユナイテッドFCに加入(コーチ兼任)。東京大学サッカー部コーチも兼任。

2016年シーズン終了現在で、J1通算290試合出場35得点、J2通算82試合で10得点。日本代表国際Aマッチ8試合出場。

2017年9月初の著書『PITCH LEVEL 例えば攻撃がうまくいかないとき改善する方法』を上梓。


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