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【コロナ禍の教育現場】子どもと教員のメンタルケアを放置するな

第37回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

学校のストレス

■感染対策が学校にもたらしたストレス

 文科省は「学びの保障」を声高に叫び、学校現場では授業時数の確保に追われている。もちろん学びの保障は大事なのだが、教員はむしろ、子どもたちの「心のケア」に神経を擦り減らしている。

 新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)の感染者数が急激に増えてきている。7月31日には東京都で初めて1日の感染者数が400人を突破して463人を記録し、大阪府では29日の221人に次いで過去2番めとなる216人となった。そのほかにも、福岡県や愛知県でも感染者の増加が確認される状況が続いている。国内全体でも29日に1,261人と1日あたりの感染者数が初めて1,000人を超え、31日には1,315人となっている。感染者数の増加に歯止めがかからない状況なのだ。   

 そうした中、学校も「無風」でいられるわけがない。7月11日と16日には埼玉県の県立学校生徒の感染が確認され、19日には沖縄県内としては初めての小学生の感染を確認、20日には福岡県で男性教員の感染が確認されている。 東京都でも、27日には児童生徒の感染としては5例目が確認されているし、29日は台東区で小学生の感染が報告されている。小平市で市立学校の非常勤講師の感染が確認されたのは、18日のことだった。

 上記はあくまで一部の数字であり、児童生徒・教員といった学校関係者への感染も確実に広まりつつあるのが現状だろう。感染が確認された場合の対応は、もちろん大変だ。ただし、それは感染確認後の対応だけではない。それ以前の対応も、教員にとっては大きな負担となっている。

 桃山学院教育大学人間教育学部の松久眞実教授は新型コロナ禍の学校現場で聞き取り調査を続けているが、そのなかで「子どもが異物を飲み込んだかもしれないと、大騒ぎになりました」という小学校教員の報告があったという。
 その教員は、「その子は母親から『新型コロナに絶対に感染してはいけない』と、きつく言われていたのがストレスになっていたのかもしれません」と説明している。

 これを特殊な例と片付けることはできないようだ。
「異常に甘えたり、不安がる子が増えている」
「生徒同士のトラブルが増えている」 
 ほかの小学校教員からも、上記にような報告があがってきている。

 また、新型コロナによるストレスは家庭内でも大きくなってきている。感染防止のために慣れないリモートワークを強いられたり、短縮営業や休業で自営業やパートなど経済的にダメージを受けている親たちのストレスは限界に近くなってきているようだ。

 その親のストレスが、知らず知らずのうちに子どもに向けられてしまう。異物を飲み込んだと学校で騒ぎになった子の場合も、親のストレスが子に向けられていると言える。いろいろな形で、子どもたちは親のストレスの影響を受けているのだ。

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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