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【難病・魚鱗癬】「悲しい。悔しい。ごめんね、やっぱり母ちゃんは弱いや」と若き母が向き合い続け、目を背けない現実

難病を持つ我が子を愛する苦悩と歓び(35)


 難病「道化師様魚鱗癬」を患う我が子と若き母の悲しみと苦しみ。「ピエロ」と呼ばれる息子の過酷な病気の事実を出産したばかりの母は、どのように向き合ったのか。『産まれてすぐピエロと呼ばれた息子』著作を綴った「ピエロの母」が医師から病名を宣告された日、母は我が子の「運命」を感謝しながら「これからの親子の人生を豊かなものにしよう」と新たなる決意をした。
 難病を持つ我が子に対する世間の目とはどのような形で母親に「原罪」感すらもたらせてしまうのか。決して悪意ではないのにも関わらず、日常の何気ない「言葉」で傷つけられるプロセスに今回は焦点を当て若き母の向き合った現実、その苦しみぬいた思いを告白していただいた。


■我が子と私の居場所

退院した次の日、それまでの病院は市外のため、緊急時にかかる市内の病院へ。
カルテをつくっておくために、紹介状を持って受診へと向かった。
産婦人科と小児科が同じスペースにあり、
待合い室には小さいお子さんもいれば、妊婦さんもいた。
こわい」という子どもの声や、
かわいそうに」という声とともに送られる視線に、じっと耐えていた。

見られる事は当たり前」と、わかっていてもやっぱり辛い。
でも、負けない。
そう思っていると、受付の方が私の前に現れ、
よろしければ奥の部屋へご案内しますね」とのことで、
案内されたのは、6畳ほどの畳の部屋だった。

そこではお腹の大きな妊婦さんが1人、横になって、診察の順番を待っていた。
陽と私が部屋に入ると、その妊婦さんはじっと陽を見て、少しして部屋から出ていった。
名前を呼ばれた訳でもなく、出ていった。
私たちのせいならば、私達が出ていかなければならないのに。
しかし、何か用事があったんだろう。

そう強く思い込んで過ごしていると、受付の方が再び現れ、
まだ時間がかかるので、違う科へ先に受診するように言われ、移動のために廊下に出ると、
先程の妊婦さんが廊下で電話をしていた。
こちらに背を向けているため、私たちには気づいていない。

そして不安そうな声で、ある言葉が聞こえた。
目赤いし皮膚なんかおかしいし、あんなんやったら・・・
後ろを通りすぎる一瞬のことだから、被害妄想かもしれない。被害妄想だと思いたい。
だけど、確かに聞こえてきた。
その言葉にチクチク、ザクザクと、ナイフで刺されているかのように、胸が痛くなった。

そうだよね。もし、出産を前に陽(我が子)の姿を見たら、

不安になるよね。

できることなら、見たくないよね。

妊婦にとって、精神的な安静はとても大切なこと。

わかってるよ。

なるべく見えないように、帽子やタオルでいたくても、

熱がこもってしまうからできないの。

ごめんなさい。ごめんなさい? 

どうして謝らなくちゃいけないんだろう。

陽は頑張ってるよ? どうすればいい? 

妊婦さんのいるところには来ちゃいけない? 

どこに居ればいい?

 

居場所がない・・・。

はやく帰りたい。もう誰にも見られたくない。

悲しい。悔しい。

悔しい。

前を向いて進むと、陽を守ると、決意できていたはずなのに、外の世界へ出た途端、その決意はあっけなく、しぼんでしまった。

この日の夜は、久しぶりに布団の中で涙を流した。
暗闇の中、優しく光る常夜灯を見つめながら。
どこに持っていけば良いかわからない、この想いを恨み、ひたすら涙を流した。

陽、やっぱり母ちゃんは弱いや。

ごめんね。

『産まれてすぐピエロと呼ばれた息子』より)

【参考資料】
本書をもとにCBCテレビ『チャント』にて「ピエロと呼ばれた息子」 追跡X~道化師様魚鱗癬との闘い(6月26日17時25分より)が放送されました。

 

KEYWORDS:

【参考文献】

『産まれてすぐピエロと呼ばれた息子』(アメーバブログ)

産まれてすぐピエロと呼ばれた息子(書籍)
ピエロの母

 

 

本書で届けるのは「道化師様魚鱗癬(どうけしようぎょりんせん)」という、
50~100万人に1人の難病に立ち向かう、
親と子のありえないような本当の話です。

「少しでも多くの方に、この難病を知っていただきたい」

このような気持ちから母親は、
息子の陽(よう)君が生後6カ月の頃から慣れないブログを始め、
彼が2歳になった今、ブログの内容を一冊にまとめました。

陽君を実際に担当した主治医の証言や、
皮膚科の専門医による「魚鱗癬」についての解説も収録されています。

また出版にあたって、推薦文を乙武洋匡氏など、
障害を持つ方の著名人に執筆してもらいました。

障害の子供を持つ多くのご両親を励ます愛情の詰まった1冊です。
涙を誘う文体が感動を誘います。
ぜひ読んでください。

◆ピエロの母のアメブロ「産まれてすぐピエロと呼ばれた息子」

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ピエロの母

50~100万人に1人の割合で生まれてくると言われる「道化師様魚鱗癬」という難病を患った長男を出産。出産から現在に至るまでの闘病を記したブログは反響を呼び、Amebaブログではすでに3000人以上のフォロワー数がおり、また同ブログのハッシュタグ記事ランキングの『#難病』部門では、トップランキング入りすることも多数ある。1987年生まれのO型。関西某県の田んぼと山が見渡せる長閑な田舎暮らし。元保育士で現在は専業主婦。


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  • ピエロの母
  • 2019.11.09