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恋に仕事に疲れたら、わざわざ訪れるといい街・西荻窪

珈琲と音楽とカレー

あなたにとって大切なものを、珈琲と音楽が思い出させてくれる。

 

 外観と看板の店名を見て、あなたはすぐに雑誌で見たカフェだとわかる。小窓から店内をうかがう。奥に小さなカウンターを見つける。空席がある。よかった。錆びついた鉄の扉をそっとあけると、キッチン内でスツールに座って文庫本を読んでいる店主と目が合う。あなたが座りたかったカウンター席をすすめてもらう。メニューの上から2番目に書いてあるストロングブレンドという珈琲を頼み、流れるレコードを聴く。

 カフェで小一時間、過ごす。読みかけの星野道夫のエッセイを最後まで読む。脳みそがじんわり満足しているのがわかる。身体が軽くなっている気がする。本を貸してくれた友達へのお礼を西荻窪で買うと決める。カフェを出て、商店街をさらに南に歩く。夏の陽は長くまだ明るい。気になるイタリアンのお店に出会い、今度はここでお昼をしようと決める。また西荻窪に来る気になっている 。不動産屋の前を通るたびに立ち止まり、この辺りの相場と間取りをチェックする。

 ガラス張りの雑貨店の前で立ち止まる。あなた好み。店内には靴下がたくさん並んでいる。奥には洋服やバッグもある。友達へのプレゼントをここで買うと決める。さっきからあなたは仕事のことも、恋人との関係も、少しも考えていない。思い出さない。いま大事なことはすてきなプレゼントを見つけることになっている。すると、あなたに似た女性がひとり入ってきた。この人も西荻窪が好きだろうと直感する。

 こんな一日を平凡と感じるだろうか。必要な一日と思うだろうか。西荻窪でカレーを食べ、珈琲を飲み、雑貨に囲まれる一日は、一見ふつうの顔をしていて、実はあなたを支えてくれるかもしれない。

 

*西荻窪にはたくさんのカレー店、カフェ、雑貨店があります。ぜひあなたの好みのお店を探して、見つけてください。

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亀星 ワルツ

1979年、福岡県生まれ。会社員。休日に漫画を描き、

インターネットに投稿。これまで文鳥を飼ったことはない。



 
 


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