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「休む」とは「動かない」ことではない!? 日本人の9割が勘違いしている休息法

自律神経が整えば休まなくても絶好調①

休息の基本はストレス軽減

 もし、体を動かさないことが休息であるなら、仕事と休息は相容れません。しかし、本当の休息とは、一口に言ってしまえば「ストレスを軽減すること」にあります。それによってQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を上げていければ、それがすなわち理想的な休息となります。

 ここで、私の専門である「自律神経」の働きについて説明しましょう。

 私たちの体には「恒常性(ホメオスタシス)」という重要な働きが備わっています。

 外部環境に変化があっても体の内部環境を一定に保つ働きです。

 たとえば、真夏でも真冬でも私たちの体温は変わりません。暑ければ汗をかいて体温が上がりすぎないようにし、寒ければ鳥肌が立って体温を下げすぎないようにしているためです。

 こうした恒常性を保つために欠かせないのが自律神経です。

 私たちに備わっている「神経」には、中枢神経と末梢神経があり、末梢神経はさらに体性神経と自律神経に分かれます。手足を動かしたりするときに働く体性神経は自分でコントロールできるのですが、自律神経はコントロールがききません。文字通り、脳の支配から自律している神経と言えます。

 この自律神経が、心臓、肺、腸などの内臓や血管の壁に伸びていて、体温だけでなく血圧や心拍数などのコントロールもしてくれています。それによって私たちは心身の健康を維持しています。

 ところが、過剰なストレスがかかると、自律神経がしっかり機能しなくなり、さまざまな不調をきたします。

 たとえば、上司に叱責され悔しい思いをすれば、走ってもいないのに心臓がどきどきしますよね。このとき、ストレスによって自律神経が乱れ、心拍数も血圧も上がっています。でも、自席に戻ってケロリと忘れてしまえる人は、やがて正常な状態に戻ります。

 ところが、いつまでも悔しさに囚われているとずっとストレスを引きずることになり、心拍数も血圧も乱れたままになってしまいます。やがて、それが本格的な病気や不調を引き起こすのです。

 つまり、休むということを考えるときには、毎日の生活の中に(もちろん仕事の中にも)、いかにこの「ケロリ」をつくりだすかが大事になってくるのです。いくら体をベッドに横たえていても、「悔しいなあ」とストレスまみれになっていたら休んだことにはなりません。

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小林 弘幸

こばやし ひろゆき

1960年、埼玉県生まれ。順天堂大学医学部教授。日本体育協会公認スポーツドクター。1987年、順天堂大学医学部卒業。1992年、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属医学研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任する。自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手、アーティスト、文化人へのコンディショニング、パフォーマンス向上指導にかかわる。著書に『なぜ、「これ」は健康にいいのか?』(サンマーク出版)『自律神経を整える「あきらめる」健康法』(KADOKAWA)『自律神経が整う時間コントロール術』(小学館)『「ゆっくり動く」と人生がすべてうまくいく』(PHP研究所)など多数。


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