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黄褐色の尿は内臓疾患の可能性大 

ここが気になる人体の機能③

尿は一日に約150L作られその99%は再利用される!尿は大量出るのは少量。黄褐色の尿は危険?尿の泡立ちはある病気の前触れかも?――知っておきたい人体の機能を『人体解剖図鑑(ヴィジアル新書)』著・高野秀樹氏が徹底解説!

尿ができるしくみ

腎小体の断面イメージ。腎小体は、糸球体とこれを包み込むボーマン嚢で構成される。

 尿生成の流れをくわしく見てみよう。まず、腎動脈は腎門で枝分かれして、輸入細動脈(ゆにゅうさいどうみゃく)となって糸球体をなしている。糸球体の毛細血管は、血管内皮細胞、糸球体基底膜、足細胞の3層構造になっていて、それぞれがフィルターのようなはたらきをしている。

 糸球体に入ってきた血液は、このフィルターを通過することでろ過されボーマン嚢へと押し出される。これが原尿だ。このとき、通常ならば、分子量の大きいタンパク質や血球成分は、ろ過されて流れ出ていくことはない。

 ひとつの腎臓には、腎小体(じんしょうたい)(糸球体とボーマン嚢)とそれにつながる1本の尿細管からなる「ネフロン」という組織が約100万個あり、そのひとつひとつで尿がつくられている。ただし、尿をつくるために、すべてのネフロンが動いているわけではない。ネフロンの一部に機能障害が見られたときなどのバックアップ機能というべきか、腎臓は余力十分、極端な話、左右どちらかひとつでも十分に腎臓は機能を発揮することができる。

腎臓断面の拡大イメージ。上部の球状のものが腎小体。それにつながる管を尿細管といい、腎小体と尿細管をあわせた組織をネフロンと呼ぶ。

 1日につくられる原尿は、約150Lにおよぶ。ただし、その約99%は尿細管を通るあいだに髄質で再吸収されるため、尿として排出される老廃物と余分な水分量はわずか1%ほど、約1.5Lだ。ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン酸、重炭酸イオンなど体に必要なもの、まだ利用できる成分は尿細管から再び血管(静脈)へと戻されるいっぽうで、不要なものが尿として排泄(尿細管分泌)される。

 つくられた尿は、尿細管からもっと太い集合管へ送られ水分や尿素などが再吸収される。その後、腎杯(じんぱい)、腎盂に集められ尿管へと流れ出る。その先にあるのが膀胱だ。

 尿の成分は約98%が水で約2%が尿素。ほかに、微量の塩素、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、リン酸といったイオン、クレアチニン、尿酸、アンモニアなどを含む。

 本来は尿に1日で50〜100㎎(成人)しか含まれないはずのタンパク質が、1日150㎎以上混じっている場合をタンパク尿という。これは一過性であったり、腎臓以外が原因の場合もあるが、糸球体が傷つくなどしていると腎機能の低下が危惧される。

 健康な尿の色は、透明な淡い黄色だ(起床直後などは濃い黄色)。黄褐色は肝機能障害、乳白色は腎臓ほか尿路の細菌感染、赤色(血尿)は腎炎や結石、腎ガンなど重大な病気の可能性がある。また、尿が泡立つ場合はタンパク尿や糖尿などが疑われる。

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高野 秀樹

たかの ひでき

東京逓信病院

1972年生まれ、茨城県出身。東京逓信病院腎臓内科医長。医学博士。



総合内科専門医・指導医、腎臓専門医・指導医、透析専門医・指導医。1998年、北海道大学医学部卒業後、東京大学医学部付属病院、虎の門病院腎センター内科、亀田総合病院総合内科、日立製作所日立総合病院内科に勤務、東京大学大学院腎臓内科学専攻、日本医科大学病理学国内留学を経て現職。在学中、水海道さくら病院透析センター長就任。現在、IgA腎症などの腎炎や慢性腎臓病、腎不全の診療とその病理的研究に従事。共著に『病気&診療 完全解説BOOK:101疾患の診断・



治療から費用まで』(医学通信社)ほか多数。『東京逓信病院のおいしい腎臓病レシピ』(主婦の友社)を共同監修。



 


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