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小池的インフォデミックに日本人はいつまで騙されるのか!?

コロナ騒動を悪用するは政治か? マスコミか?


コロナを悪用したテレビ報道コロナビジネスと監視社会に続き、今回は小池都知事の再選を受け、言葉を操る政治とテレビの日本型インフォデミックについて、元芸人の作家・松野大介が論を展開する。


■テレビを利用して問題点の本質を濁すインフォデミック

東京都知事選の真っ只中、都内の新型コロナウイルス感染者拡大傾向に関して小池都知事が緊急会見。都知事選の話題もふっ飛ぶタイミングでニュース報道を占拠した。

「盛り上げに欠けた都知事選」と、盛り上げなかったテレビが言う始末の都知事選。すでに忘れられた選挙だが、小池百合子都知事への大手テレビ局の“協力”は、驚くほどだった。
 カイロ大学卒疑惑ネタにはほぼ触れずにきたワイドやニュース報道は、選挙ウィークに新型コロナの都の感染数が三桁に上がったことを連日報じる際、対応に動く小池都知事を全面的に扱い、選挙当日まで他の候補者がアピールする隙間をまったく作らなかった。

 この報道が確信的だと感じた理由は、2つ。
「もう誰も、緊急事態宣言とか、やりたくないんですよ!」という、西村大臣のキレ気味会見を放送し、都民・国民の政治への不満を小池都知事から内閣へスルーさせたこと。ワイドでは内閣や西村大臣を批判するコメンテーターの中には局の意向を汲み、小池批判に口を閉じた者もいただろうと想像する。
 2つ目は、都知事の発言通りに感染源を「夜の街」と報じ、ホストクラブの感染状況を克明に伝えたこと。番組によっては、「無症状で感染拡げる夜の街の若者←→重症化しやすい高齢者」という構図を作成した。それにより小池都知事は、夜の街の若者から(支持層の)高齢者を守る立ち位置も得られる。
 この2つで、小池さんへの批判は、高齢利用者が少ないネット上のみで抑えられた。
 当選確実が出た直後の会見で感染数について小池さんは、「検査を増やしましたので」と答えた時の、あの落ち着いた様子は印象的だった(※のちに「夜の街関連の方が集団検査を受けている」とも発言)。「最も評価する政策」の1位がぶっちぎりの63%で「新型コロナ対策」!

 2001年に米国で同時多発テロが起きた直後、ブッシュ政権は支持率が下がった時に「テロの脅威」を煽り、テロ警戒レベルを上げると支持率が回復した……。ドキュメント映画で見たその話と同じように、「ウイルスの脅威」を悪用する政治家が日本に現れると思っていたが、まさか小池さんとは!
 飲食店何万個分の満員電車の車両では感染しないが、「夜の街」だと感染するウイルス(小池さんが夜の街を嫌う個人的な理由の1つをあるマスコミ人から聞いたが、とても書けない)。ワイド・ニュース報道は「夜の街」というワードを使い、「煽り報道」も再開、日毎の陽性者を棒グラフで積み上げた。

 今回はコロナそのものがテーマではないので、検査数の増加に対する感染者数の割合や、自粛の必要性・効果や医療崩壊には触れないが、仮に自粛が必要な場合、「地域別」や「業種分け」とは違う案がいい。
 ブルームバーグの記事によると、約3万5千人の死亡者を出しているイタリアは、死亡者の96%に持病があり、60%近くが3つ以上の基礎疾患があり、死亡の平均年齢80歳とイタリアの保険当局が報告したという。どこの国も傾向は近いだろう。
 なので、重い疾患・持病のある人、もしくは寝たきりか体力のない高齢者、それらの方を介護している方たち(外で感染したと知らずにうつすから)に最初に自粛をお願いする。強制力はないが、政府は補償金を出す。しかし高齢者に支持層が多い小池さん(他の政治家も)は、高齢者にうつさないために「夜の街」に休業させたい姿勢だった。

 しかし高齢者に支持層が多い小池さん(他の政治家も)は、高齢者にうつさないために「夜の街」に休業させたい姿勢だった。選挙前後は特にホストクラブを槍玉に挙げ、政治におもねるテレビも「ホストクラブは密だ」「ラッパ飲みがいけない」と煽った。
 テレビに影響されやすい人は、「ホストはワンルームに友達や女と住むから感染するんだ」と持論を発揮し、やがては「だいたいだらしない若者だ」「チャラい」「税金払ってるのか?」とウイルスと無関係の「職種のイメージ」まで頭を巡るようになる。テレビは決して「ホストはだらしない」と言わないが、ラッパ飲みや酔っ払う映像でイメージを植えつけていく。
 私はこれを、政治家によるテレビを利用した日本的インフォデミックだと思う。

 前回の記事では、「感染が速かった理由が人と物の行き来が激しい行き過ぎたグローバル社会なら、コロナ騒動が広まったのはウイルス化した情報社会のインフォデミック」と書いた。
 インフォデミックは、「フェイクニュース」「デマ」がメディア・ネットを駆け巡ることで起きると多くの方が説明しているので割愛して、私が触れたいのは「日本型テレビインフォデミック」。
 日本人は先進国の中でもダントツでテレビを信じる国という調査があった。特に高齢者は、冒頭で触れた都知事選の件のようにネットに触れる機会は非常に乏しく、テレビが情報源の中心の人が当然に多い。
 3月にトイレットペーパーを買い溜めする列に高齢者が多いことで、現代でも高齢者はテレビに影響されやすいとうかがえた。高齢者の絶対数が多いので、列に並ぶ半数が高齢者になる。

 前々回(5月末)の記事に、ワイド・ニュース報道(主に夕方)で不正映像を使ったり、コロナを煽れるデータを報じる姿勢について書いたりした頃、私が「インフル関連では日本で去年1万人死んでる」と言うと高齢者のほとんどは知らず、「そうなの?」と驚き聞き返してきたか、「そんなこと言われてもコロナ恐いよ!」と逆に怒るかだった。
 小池都知事は再選にテレビを利用したが、日本の政治家がテレビを利用する時、「言葉」を巧みに操る技法がある。
 今回の「夜の街」を例にすると、
「夜の街の無症状の若者←→重症化しやすい高齢者」
 というふわっとした対立構図をテレビが作ると、「感染防止策をとらなかった都知事」への批判をかわせる。少なくとも緩和できる。補償金も出さずに済むためか、「感染対策してる店にはステッカーを貼ってもらって」と言う。そういう店のスタッフは積極的に検査はしないし、ホストクラブはステッカーを貼らないと補償の必要もない。

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松野 大介

まつの だいすけ

1964年神奈川県出身。85年に『ライオンのいただきます』でタレントデビュー。その後『夕やけニャンニャン』『ABブラザーズのオールナイトニッポン』等出演多数。95年に文學界新人賞候補になり、同年小説デビュー。著書に『芸人失格』(幻冬舎)『バスルーム』(KKベストセラーズ)『三谷幸喜 創作を語る』(共著/講談社)等多数。沖縄在住。作家、ラジオパーソナリティー、文章講座講師を務める。

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